2026.06.11

業務改善

間接業務の効率化アイデアと優先順位の付け方|何から着手すべきか

「間接業務を効率化したいが、何から手を付ければいいか分からない」——経理・人事・総務・情報システムといったバックオフィスを抱える企業から、最も多く寄せられる相談のひとつです。

結論から言えば、間接業務の効率化は「アイデアをたくさん集めること」ではなく「効果の大きい順に並べて、上から着手すること」が成否を分けます。やみくもにツールを入れても、効果の小さい作業ばかり自動化して「やった気」で終わるからです。

本記事では、効果が大きい順に検討するECRSの4原則を軸に、間接業務の効率化アイデアと優先順位の付け方を、公的機関の公開事例と、私たちが業務改善(BPR)支援の現場で繰り返し見てきた知見を交えて整理します。


結論:間接業務の効率化は「捨てる」から始めると最も効く

先に全体像を示します。間接業務の効率化は、次の3ステップで進めます。

間接業務の効率化は「棚卸し→数値化→優先順位」で進める
間接業務の効率化は「棚卸し→数値化→優先順位」で進める
  1. 棚卸し:誰が・どの業務を・どのくらいの頻度でやっているかを全部書き出して見える化する
  2. 数値化:作業時間 × 頻度 × 単価で「金額」に換算し、コストの大きい業務を特定する
  3. 優先順位:効果の大きさと実行のしやすさで並べ替え、上から着手する

そして優先順位を考えるとき、効果が最も大きいのは「その作業をやめる(=捨てる)」ことです。ツール導入やAI化はその後。順番を間違えると、本来やめるべき作業を一生懸命に自動化する、という典型的な失敗に陥ります。

関連記事:効率化を含む業務改善全体の進め方は業務改善の進め方5ステップで、体系的な取り組み方は業務改善コンサルティング(ピラー)で詳しく解説しています。


なぜ間接業務の効率化は進まないのか — 3つの壁

アイデア出しに入る前に、なぜ多くの間接業務効率化が頓挫するのかを押さえます。現場の本音をX(旧Twitter)から拾うと、原因は概ね次の3つに集約されます。

壁1:そもそも「可視化」されていない

GMO TECHの大澤健人氏は「属人化をなくす前に、まず“可視化”されているかを確認したほうがいい。見えていないものは、引き継げないし、再現も改善もできません」と指摘しています(出典:X投稿)。

効率化の対象が見えていないのに施策だけ走らせるのは、暗い部屋で模様替えをするようなもの。最初の一歩は必ず棚卸しです。

壁2:業務が「属人化」している

「あの人がいないと回らない」状態は、効率化以前にリスクそのものです。誰か一人の頭の中にしか手順がない業務は、改善しようにも全体像が掴めません。私たちがBPR支援で間接部門の棚卸しを行うと、手順書のない“その人だけが分かる業務”が、棚卸し対象の体感で3〜4割は顔を出します。逆に言えば、棚卸しはそのまま属人化のあぶり出しにもなります。可視化(壁1)と属人化の解消はセットで進めます。

壁3:「捨てる」意思決定が誰もできない

攻めのバックオフィス支援を手がける小林史弥氏は「システムを入れること以上に“業務を捨てること”の方が難しい。“なんとなく不安だから”という理由で行われているチェックが、組織のスピードを殺している」と述べています(出典:X投稿)。

私たちがBPR支援で棚卸しをすると、「申し送り」「二重チェック」「形だけの定例報告」のように、いつの間にか“誰のためでもなくなった作業”が必ず一定量出てきます。これらは後述するECRSの「排除(Eliminate)」の最有力候補です。


効率化の前にやること:業務棚卸しで「見える化」する

優先順位を付けるには、まず判断材料が必要です。それが業務棚卸しです。

棚卸しの手順4ステップ

  1. 目的と範囲を決める:「経理部門の月次決算まわり」など対象を絞る。最初から全社をやろうとして頓挫するのが定番の失敗です。
  2. 業務を書き出す:誰が・何を・どの頻度で(毎日/週次/月次)行っているかを一覧化する。
  3. 作業時間と頻度を記録する:1回あたりの所要時間と発生頻度をセットで記録します。
  4. コストに換算する:作業時間 × 頻度 × 人件費単価で、年間コストを金額にします。

「金額」で見せると優先順位の合意が早い

棚卸し表に金額を入れる効果は絶大です。私たちの経験では、「この作業は年間でこれだけのコストです」と数字で見せた瞬間に、議論が感情論から数字の議論に変わります。「長年やってきたから」という抵抗が、「年間120時間か、ではやめよう」という意思決定に変わるのです。

棚卸し・可視化の具体的なやり方は業務可視化のやり方で手順を解説しています。本記事末尾では、そのまま使える業務棚卸しテンプレートも無料配布しています。


間接業務の効率化アイデア20 — ECRSの4原則で整理する

アイデアは思いつきで挙げるのではなく、ECRSの4原則という型に沿って出すと、漏れなく・効果の大きい順に整理できます。ECRSは製造現場で生まれ、いまはバックオフィス・間接部門にも広く使われる定番フレームワークです(参考:キーエンスJMAC)。

ECRSの4原則と改善効果の大きさ。E→C→R→Sの順に効果が大きい
ECRSの4原則と改善効果の大きさ。E→C→R→Sの順に効果が大きい

検討の順番は E → C → R → S。排除(E)が最も効果が大きく、簡素化(S)に向かうほど効果は小さくなります。

E:Eliminate(排除)— そもそもやめられないか【最優先】

最も効果が大きく、コストもかからない打ち手です。

  • 形骸化した定例会議・定例報告を廃止する
  • 二重チェック・三重承認を1回に減らす(誰も使っていないチェックをやめる)
  • 使われていない社内資料・帳票の作成をやめる
  • 同じ情報を複数システムに打ち込む重複入力をやめる
  • 誰も読んでいない外部向けの定期報告・提出物を廃止する

C:Combine(結合)— まとめて一度にできないか

  • 部署ごとにバラバラだった申請・経費精算を一本化する
  • 散在する問い合わせ窓口を1か所に集約する
  • 月次で何度も行う作業をまとめ処理にする
  • 複数のExcel管理表を1つに統合する
  • 似た内容の会議を統合する

R:Rearrange(交換=再配置・組替)— 順番・担当・場所を入れ替えられないか

Rearrangeは「交換」と訳されますが、要は作業そのものは残しつつ、順番・担当・場所(タイミング)を組み替えてムダを減らす発想です。

  • 承認の順番を組み替えて手戻りを減らす
  • ベテランがやっていた作業を適切な担当に振り替える
  • 後工程でのチェックを前工程に移してやり直しを防ぐ
  • 月末に集中する作業を平準化して分散する
  • 紙の回覧をやめ、処理の流れ自体を見直す

S:Simplify(簡素化)— もっと簡単にできないか

  • 入力項目の多いフォーマットを簡素化する
  • 定型のメール・文書をテンプレート化する
  • Excelの手作業を関数・マクロ・RPAで自動化する
  • 判断に迷う作業をチェックリスト化して属人性をなくす
  • 生成AIで議事録要約・文書ドラフトを下書きする

ポイントは、SやCの「自動化・効率化」から手を付けたくなる衝動を抑え、まずE(排除)を一周させること。やめれば自動化する必要すらありません。


優先順位の付け方:効果 × 実行容易性のマトリクス

ECRSでアイデアを出したら、次は着手順を決めます。使うのは「効果の大きさ × 実行のしやすさ」の2軸マトリクスです。

優先順位マトリクス(効果×実行容易性)
優先順位マトリクス(効果×実行容易性)
  • 最優先(効果大 × 実行易):すぐやる。棚卸しで見つかった「排除」案件はここに集まります。
  • 計画的に(効果大 × 実行難):システム導入など準備が要るもの。ロードマップを引いて進める。
  • スキマで(効果小 × 実行易):小さく自動化。手が空いたときに。
  • 後回し/捨てる(効果小 × 実行難):やらないと決めるのも立派な意思決定です。

棚卸しで金額換算した「効果」を縦軸に置くと、このマトリクスは“感覚”でなく“数字”で並びます。最初の1か月で、左上(最優先)から目に見える成果=クイックウィンを1〜2件出す。これができると現場の協力度が一段上がり、次の施策が進めやすくなります。

マトリクスで決めた施策を社内で通すには、提案の書き方も重要です。通る業務改善提案の書き方もあわせてご覧ください。


【事例】間接業務効率化の進め方

公開事例:自治体の認定事務(処理日数を約10日短縮)

デジタル庁が公開している郡山市の事例は、間接業務効率化の進め方の好例です(出典:デジタル庁ニュース)。

  • 棚卸し:担当係の全職員に業務内容・工程・業務量をヒアリングし、全業務を見える化
  • 優先順位:業務を4フェーズに整理し、効果の大きい「調査票確認のAI化」「審査会のオンライン化」を先行。逆に、現場でのタブレット入力は「かえって時間がかかる」と判断してあえて見送り
  • 成果:処理日数 約45日→約36日(約10日短縮)、超過勤務 約70%削減、1件あたりの確認時間 40分→5分

担当者は「完璧を求めすぎないこと。AIの精度が80%でも、残り20%を人が担保すれば効率化できる」と語っています。全部を一度にやろうとせず、効果の大きいところから着手し、見送る判断もする——優先順位付けの本質がよく表れた事例です。

BPR支援の現場から:着手順の「型」

私たちが中堅企業の間接部門を支援する際にも、再現性高く効くパターンがあります。

  • 棚卸しをすると、「捨てられる作業(排除・統合の候補)」は、洗い出した業務のおおむね2〜3割にのぼる。まずここを刈り取るだけで体感が変わる
  • そして最初のクイックウィンは、たいてい1件で月あたり数時間〜十数時間規模の削減になる。小さく見えて、現場の「変えれば楽になる」という納得感を生む効果が大きい
  • 効率化が頓挫する最大の要因は、ツール選定ではなく「捨てる/残すの判断が現場任せ」になること。この意思決定を管理職が引き取ると一気に進む
  • 着手部門に迷ったら、医療経営の長英一郎氏が指摘するように「業務の流れの最後に必ず来る経理から」という考え方も有効です(参考:X投稿

なお、上記のレンジ(排除候補2〜3割、属人化3〜4割、クイックウィン月数時間〜十数時間)は特定の1社の数字ではなく、製造・サービス業を中心とした中堅企業の間接部門支援を通じて繰り返し観察される傾向値です。守秘義務に配慮し、業界・規模・打ち手の傾向のみを記載しています。


失敗しないための3つの注意点

  1. 完璧を求めない:精度80%でも、残りを人が担保すれば前進です。100点を狙うと永遠に始まりません。
  2. 現場を巻き込む:効率化はやらされ仕事になると形骸化します。棚卸しの段階から現場を当事者にする。
  3. クイックウィンを先に出す:最初に小さな成功を見せると、その後の大きな施策の協力が得やすくなります。

間接業務を「コスト」としか見ない経営は、財務管理が軽視され、法務・労務の整備も後回しになり、いずれ大きなツケを払うことになる——という指摘もあります(参考:X投稿)。間接業務の効率化は、守りであると同時に会社のスピードを上げる攻めの投資だと捉えることが大切です。


まとめ

  • 間接業務の効率化は「アイデアの数」より「優先順位の付け方」で決まる
  • 進め方は 棚卸し → 数値化 → 優先順位 の3ステップ
  • アイデアは ECRS(排除→結合→交換→簡素化) の順で出す。最も効くのは「捨てる(Eliminate)」
  • 着手順は 効果 × 実行容易性のマトリクスで決め、最初の1か月でクイックウィンを出す

間接業務の効率化は、正しい順番で進めれば、特別なツールがなくても確実に成果が出ます。まずは自部門の棚卸しから始めてみてください。


📄 無料ダウンロード:業務棚卸しテンプレート

本記事の手順をそのまま実践できる「業務棚卸しテンプレート」を無料で配布しています。誰が・何を・どの頻度で・どれだけの時間をかけているかを記録し、コスト換算まで行えるシートです。
👉 業務棚卸しテンプレートをダウンロードする(無料)

💬 無料相談:自社の間接業務、どこから効率化すべき?

「うちの場合、何を捨てて何を残すべきか」を一緒に整理します。現場主義 × AIで、机上論でない実行可能な優先順位をご提案します。
👉 業務改善の無料相談はこちら

さらに体系的に取り組みたい方は、ピラー記事業務改善コンサルティングもご覧ください。


監修者

大槻 伸夫(おおつき のぶお)|キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO
“現場主義 × AI” を掲げ、製造・サービス業を中心に業務改善(BPR)とDXの実行支援を手がける。机上のフレームワークで終わらせず、現場が実際に動く優先順位付けと、AIを活用した実装まで伴走することを信条とする。


監修者

大槻 伸夫/ 代表取締役 CEO

キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO。「現場主義×AI」を掲げ、業務改善(BPR)・PMI・経営支援・AIプロダクト開発を一気通貫で支援。クライアント現場での実行支援を重視する。

業務改善・PMIのご相談はキュリオシティへ

記事で紹介したテンプレートの配布や、貴社課題に合わせた無料相談を行っています。

BACK TO INDEX