2026.06.10

業務改善

業務の属人化を解消する進め方と仕組み化のコツ

※本記事は2026年6月時点の情報と、当社の業務改善(BPR)支援の実務にもとづく内容です。守秘案件は業界・規模・概要のみに匿名化しています。

「あの人がいないと、この業務は回らない」——休まれると現場が止まる、退職されたら引き継げない、品質が担当者によってバラつく。業務の属人化は、多くの現場が抱える慢性的なリスクです。にもかかわらず「マニュアルを作ろう」と号令をかけても、たいてい途中で形骸化します。なぜなら、属人化の解消は順番を間違えると必ず失敗するからです。

この記事では、属人化を解消する進め方を「①可視化 →②切り分け →③標準化 →④仕組み化」の流れに沿った5ステップで解説します。ポイントは2つ。1つは、いきなりマニュアルを作らずまず可視化から入ること。もう1つは、属人化をすべて消そうとしないことです。当社が大手企業のBPR(業務改善)を伴走支援してきた実務感覚と、現場で実際に属人化と向き合っている人たちの生の声を交えて、再現できる形で示します。記事末では、棚卸しから改善まで使えるBPR進め方ガイド/業務棚卸しテンプレも無料配布しています。

この記事の監修:大槻 伸夫(キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO)。”現場主義 × AI”を掲げ、決済・物流・製造など複数業界の大手企業の業務改善(BPR)・PMI(買収後統合)を伴走支援。現場の業務棚卸し・標準化から生成AI活用までを一貫して手がける。


結論|属人化の解消は「可視化→標準化→仕組み化」の順。いきなりマニュアルは作らない

業務の属人化を解消する5ステップ:棚卸しで特定→可視化→消す残すの切り分け→判断基準まで標準化→使われる状態に仕組み化
業務の属人化を解消する5ステップ:棚卸しで特定→可視化→消す残すの切り分け→判断基準まで標準化→使われる状態に仕組み化

先に結論です。属人化の解消が続かない現場は、ほぼ例外なく順番が逆です。可視化しないままマニュアル作成から始めるので、「何が属人化しているのか」すら共有されず、作っても使われずに終わります。

GMO TECH副社長の大澤健人氏は、Xで的確にこう指摘しています。「よく『属人化をなくす』と言いますが、その前に“可視化”されているかを確認したほうがいい。見えていないものは、引き継げないし、再現も改善もできません。整っていない現場は、真っ暗な部屋で模様替えしているようなもの」(該当投稿)。まさに、可視化は解消の前提条件です。

だから本記事の進め方は、①棚卸しで属人化業務を特定 →②可視化 →③消す/残すの切り分け →④判断基準まで標準化 →⑤使われる状態に仕組み化という順番を取ります。マニュアル(標準化)が出てくるのは4番目。ここを最初に持ってこないのがコツです。


そもそも属人化とは?「消すべき属人化」と「残すべき属人化」がある

属人化とは、ある業務の手順・判断基準・進捗を特定の担当者しか把握しておらず、他の人が再現できない状態を指します。ただし、ここで多くの解消プロジェクトが見落とす重要な前提があります。属人化には、消すべきものと、残すべきものがあるということです。

プロダクトコーチのJoe Hirose氏は、この区別を明快に言語化しています。「属人化には良いものと悪いものがある。悪い属人化は、誰でもできるはずの仕事がブラックボックス化し、その人しか触れない状態。運用が魔改造され、便利だが説明できず、もう戻せない。これはただの組織負債。一方で、良い属人化もある」(該当投稿)。

別の現場感覚として、うめめ氏も「オペレーションの仕事は属人化を解消すべきだが、そうじゃない(価値を出す)仕事はどんどん属人化すべき」と述べています(該当投稿)。つまり、解消の対象は「誰でもできるはずなのにブラックボックス化している定型業務」であって、属人化を一律にゼロにすることではありません。

消すべき属人化(悪い属人化) 残すべき属人化(良い属人化)
性質 定型業務がブラックボックス化 個人の専門性・創造性が価値の源泉
請求処理・データ更新・問い合わせ一次対応 高度な企画、難案件のクロージング、職人技
リスク 担当者不在で業務停止、品質バラつき 過度な標準化で価値・スピードを失う
打ち手 標準化・仕組み化で「誰でもできる」へ 言語化・育成で「再現できる人を増やす」

「あの人がいないと回らない」状態は最大の経営リスク(書籍3万部のゆる麻布氏もこう指摘)ですが、まずどの業務がどちらの属人化かを切り分けることが、解消の第一歩になります。


属人化が解消できない3つの本当の原因

号令だけでは属人化は消えません。当社のBPR支援で現場に入ると、解消が進まない原因はほぼ次の3つに集約されます。

  1. そもそも可視化されていない:何が・誰に・どれだけ属人化しているかが見えていない。前述の大澤氏の「真っ暗な部屋で模様替え」状態です。
  2. 作る時間と評価がない:マニュアル作成は「重要だが緊急でない」仕事の典型。日常業務に追われ、作っても評価されないため後回しになります。
  3. 「ツールを入れれば解決する」という誤解:ここが最大の落とし穴です。

3つ目について、エクセル関数擬人化本の著者・筒井氏の指摘が痛烈です。「『Excelの属人化解消のために入れたシステムを、私しか使えない』」——ツールを入れた結果、新たな属人化が生まれる皮肉です(該当投稿)。さらに「システム化は半分正しく半分ズレている。データを溜める・処理する“中身を理解するつもり”がないと、マスタや設定を触れず、結局は同じ人に属人化する」とも述べています(該当投稿)。

ツール導入は解消の手段であって、ゴールではありません。業務の中身を理解し、標準化したうえでツールに載せて初めて、属人化は解けます。


業務の属人化を解消する進め方【5ステップ】

ここからが具体的な進め方です。前章の3つの原因を順番に潰していく構成になっています。

STEP1|棚卸しで「属人化している業務」を特定する

まず、対象部署の業務を洗い出し、各業務に「主担当しかできない=属人度が高い」かどうかの印をつけます。これは業務棚卸しの作業そのものなので、業務棚卸しの手順(粒度を引き継ぎ単位でそろえる、頻度・工数を記録する)に沿って進めると精度が上がります。属人度・マニュアル有無の列を棚卸表に足すのがコツです。

STEP2|属人化業務を可視化する

特定した属人化業務を、手順・判断・受け渡し(誰から誰へ)が見える業務フロー図にします。可視化されていないものは引き継げません。具体的な可視化の方法は 業務可視化のやり方 で詳しく解説しています。ここで「実は2人に分散していた」「裏で例外処理が走っていた」といった隠れた属人化が表面化します。

STEP3|「消す属人化/残す属人化」を切り分ける

可視化した業務を、前章の表のとおり定型でブラックボックス化したもの(消す)個人の専門性が価値のもの(残す・育成で再現性を上げる)に仕分けます。すべてを標準化対象にすると現場が疲弊し、かえって反発を生みます。「消す」と決めた業務だけを次のSTEP4へ送ります。

STEP4|手順だけでなく「判断基準」まで標準化する

標準化=手順書づくり、と考えると失敗します。属人化の正体の多くは手順ではなく“判断”だからです。弁護士の浅野英之氏は、契約審査の現場でこう経験しています。「『Aさんなら通るがBさんだと厳しい』と、審査が完全に担当者ガチャになっていた。経験と勘の判断はスピードもバラつきも問題。アドバイスを企業側で蓄積する仕組みを作ったら、属人化が一気に消えた」(該当投稿)。

つまり、「どういうときに、何を根拠に、どう判断するか」まで言語化して初めて、属人化は解けます。手順書に加えて「判断基準・例外対応・NG例」をセットで残すのがコツです。

STEP5|「使われる状態」まで仕組み化する

最後に、標準を現場で実際に使われる状態にします。作って終わりにせず、次章のコツで運用に載せます。ここまでやって、属人化の解消は初めて完了します。


属人化を“元に戻さない”仕組み化のコツ5つ

解消は一度やれば終わりではありません。放っておくと現場はまた属人化に戻ります。仕組み化=戻らない状態を作ることです。

  1. 文字+動画+「置き場所を1つに」:実務系の解説では、解消の3ステップとして「①文字で残す ②動画を撮る ③置き場所を1つにする」が挙げられています(暗黙知を形式知に変える解説)。手順は文字、操作は画面録画、そして保存場所を1か所に統一する。探して見つからなければ、結局「あの人に聞く」に逆戻りします。
  2. 完璧主義をやめる:100点のマニュアルを目指すと永遠に完成しません。7割の精度で公開し、使いながら追記する運用が現実的です。
  3. 「中身を理解させる」をセットにする:前述の筒井氏の指摘どおり、ツールや手順を渡すだけでは新たな属人化を生みます。なぜそうするのかの背景まで共有し、複数人が触れる状態にします。
  4. 「断る勇気」=マネジメントの仕事と位置づける:ある現役の部長は「『断る勇気』を持ち、属人化を排除する仕組み作りに全力を注いだ。結果、チームの残業は減り成果が上がった」と語ります(該当投稿)。仕組み化は現場任せにせず、管理職が時間を確保して旗を振る対象です。
  5. 配置転換・長期休暇で「回るか」をテストする:定期的な担当替えや連続休暇は、属人化を排除する仕組みそのものです(ゆる麻布氏も同様に指摘)。担当を外しても回るかどうかが、仕組み化できたかの最終チェックになります。

【事例】サービス業の属人化解消(匿名)

当社が支援したあるサービス業の現場では、受付から手配までの一連の業務が、長年いるベテラン数名の「頭の中」で回っていました。休まれると新人が判断できず止まる、品質も人によってバラつく——典型的な悪い属人化です(守秘のため業界・規模・概要のみ)。

進め方は本記事のとおりでした。まず棚卸しと可視化で、属人化していた工程を洗い出すと、詰まりは手順そのものより「例外時にどう判断するか」が一切共有されていない点にありました。そこで手順書に加え、判断基準と例外対応・NG例を1か所に集約。さらにベテランが新人に背景を口頭で説明する時間を運用に組み込みました。結果として、特定の人に問い合わせが集中する状態が緩和され、新人が自走できる範囲が広がりました(成果は定性・匿名)。

この案件で改めて確認できたのは、属人化の正体は「手順の不在」より「判断の不在」だということです。だからSTEP4で判断基準まで標準化することを、当社は最重要視しています。業務改善全体の進め方は 業務改善の進め方5ステップ にまとめています。


属人化の解消は、そのままAI活用の前提になる(現場主義×AI)

属人化の解消は、いま「生成AIを使えるかどうか」を分ける入口にもなっています。AIに業務を任せるには、目的・手順・判断基準が言語化=構造化されている必要があります。担当者の頭の中にある属人化業務は、AI化の判断すらできません。

裏を返すと、STEP4まで丁寧に標準化された業務は、そのまま生成AIへの指示書(手順+判断基準)として使えます。当社が”現場主義 × AI”を掲げるのは、机上のAI導入ではなく、現場の属人化を地道に解いて構造化することこそが、AI活用の土台になるからです。属人化の解消は、コスト削減やリスク回避だけでなく、未来のAI活用への投資でもあります。


よくある質問(FAQ)

Q. マニュアルを作ったのに属人化が解消しません。なぜ?
A. 多くの場合、(1)可視化を飛ばして作った、(2)手順だけで判断基準が抜けている、(3)置き場所が分からず使われていない、のいずれかです。本記事のSTEP2・STEP4・仕組み化のコツ①を見直してください。

Q. 属人化はすべて解消すべきですか?
A. いいえ。消すべきは「誰でもできるはずなのにブラックボックス化した定型業務」です。個人の専門性が価値を生む業務は、標準化より育成で再現できる人を増やすほうが適切です。

Q. どこから手をつければいいですか?
A. まず業務棚卸しで「属人度が高く、止まると影響が大きい業務」を1つ特定し、そこだけ可視化→標準化を回します。全部を一度にやらないのが続けるコツです。

Q. ツールを入れれば属人化は解消できますか?
A. ツールは手段であってゴールではありません。中身を理解しないまま導入すると、「そのツールを使える人」への新たな属人化が起きます。標準化したうえで載せるのが順番です。


まとめ

  • 属人化の解消は 可視化→切り分け→標準化→仕組み化 の順。いきなりマニュアルを作らない
  • 消すべき属人化(定型のブラックボックス)と残すべき属人化(専門性)を切り分ける。全部はゼロにしない
  • 属人化の正体は手順より「判断」。STEP4で判断基準・例外・NG例まで言語化する
  • ツール導入はゴールではない。「使われる置き場所」と「中身の理解」まで仕組み化して初めて戻らない
  • きれいに標準化された業務は、そのままAI活用の前提(指示書)になる

属人化の解消は、業務改善の入口です。全体像と支援内容は 業務改善コンサルティング、改善を社内で通すコツは 通る業務改善提案の書き方 を参照してください。

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属人化の解消を伴走してほしい方へ
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この記事の監修:大槻 伸夫(キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO)


監修者

大槻 伸夫/ 代表取締役 CEO

キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO。「現場主義×AI」を掲げ、業務改善(BPR)・PMI・経営支援・AIプロダクト開発を一気通貫で支援。クライアント現場での実行支援を重視する。

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