2026.08.12

業務改善

オフィスの5Sの進め方|整理・整頓から定着までの手順と効果

「5Sをやろう」と号令がかかったものの、気づけば”月に一度のオフィス掃除大会”になっていた——。事務職・間接部門で5Sに取り組む会社の、いちばん多い失敗がこれです。製造現場の5Sは工具や部品という「モノ」が主役ですが、オフィスの主役は書類と、共有ドライブの中のデータ=情報。ここを取り違えると、机の上はきれいになっても、肝心の「探す時間」は一向に減りません。

オフィスの5Sは、「整理→整頓→清掃→清潔→しつけ」の順で進め、モノに加えて『情報の5S』(書類・ファイル・共有ドライブ)まで広げ、個人の頑張りでなく”しくみ”で定着させるのが要点です。順番を飛ばして掃除(清掃)や見た目のルール(しつけ)から入ると、経験上、多くの職場で数か月のうちに形骸化します。

この記事では、私たちキュリオシティが間接部門・バックオフィスの業務改革(BPR)を支援してきた知見と、コクヨの調査や厚生労働省の公的データ、5S実務家の発信をもとに、オフィスの5Sを”続く仕組み”にする具体的な進め方と効果を解説します。業務改善全体の型は業務改善コンサルティング(ピラー)で、汎用的な手順は業務改善の進め方5ステップで整理しています。本記事はその「オフィス・情報」版です。

オフィスの5Sとは?製造業の5Sと何が違う?

オフィスの5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つの頭文字(S)で職場を整え、探す・迷う・間違えるムダをなくす活動です。製造業との最大の違いは、対象がモノだけでなく「情報」に広がる点にあります。

まず5つのSの定義を押さえます。

S 読み 意味(やること) オフィスでの対象
整理 Seiri 要るもの/要らないものを分け、要らないものを捨てる 書類・備品・不要データ・使わないメール
整頓 Seiton 要るものを、誰でもすぐ取り出せる場所・表示で置く 定位置化・ファイル名/フォルダ命名・ラベル
清掃 Seisou きれいに掃除し、いつでも使える状態に点検する 机上・共用部・PCデスクトップ・不要ファイル削除
清潔 Seiketsu 整理・整頓・清掃の良い状態を維持する ルール化・チェックリスト・定期棚卸し
しつけ Shitsuke 決めたことを全員が自然に守る状態まで習慣化する 新人教育・朝礼共有・評価への組み込み

5Sはトヨタ生産方式をルーツとし、厚生労働省も職場環境改善の手法として推奨しています(出典:富士フイルムビジネスイノベーション「5S活動とは?」)。製造現場では「工具の姿置き」「部品の定位置化」のように物理的なモノが中心です。

一方オフィスでは、机の上の書類は氷山の一角にすぎません。本当に厄介なのは、共有サーバーやクラウドの中で増え続けるファイルです。実際、平均的なビジネスパーソンは情報の検索・保管・引き継ぎに1日30分=年間約120時間を費やしているという調査もあります(出典:コクヨ「ペーパーレス化で業務時短を」)。オフィスの5Sは、この「情報のムダ」を減らせるかどうかで成否が決まります。

オフィスの5Sの進め方は?5つの手順で解説

オフィスの5Sは、準備(推進体制とエリアを決める)→整理→整頓→清掃→清潔→しつけの順に、Sを一つずつ回すのが基本です。とくに大事なのは「整理(捨てる)を先にやり切る」こと。要らないものを残したまま整頓しても、不要品にきれいな定位置を与えるだけで終わります。

進め方の全体像を先に示します。

手順 やること つまずきポイント
0. 準備 推進担当・対象エリア・期限を決める 全社一斉にやらない。1エリアから
1. 整理 要否を基準で判断し不要品・不要データを捨てる 「いつか使う」を残さない。判断基準を先に決める
2. 整頓 定位置・定量・表示(ラベル/命名規則)を決める 使用頻度で置き場所を決める。表示で誰でも戻せる
3. 清掃 掃除と点検を日常業務に組み込む 大掃除イベント化しない。5分の日常清掃に
4. 清潔 1〜3の状態を保つルール・チェックリスト化 属人的な”気合い”でなく仕組みで維持
5. しつけ 教育・共有・評価で全員の習慣にする ルールを増やしすぎない。守れる数に絞る

手順0:まず「1エリア・推進担当・期限」を決める

いきなり全社・全フロアで始めないことが、失敗を避ける最大のコツです。「経理の書庫」「共有ドライブの営業フォルダ」など対象を1つに絞り、推進担当と期限(例:2週間)を決めて着手します。小さく始めて成功体験をつくり、横に広げる——この順番は現場改善の進め方とも共通する鉄則です。

手順1:整理(Seiri)— 判断基準を決めて「捨てる」を先にやり切る

整理は、要るものと要らないものを分け、要らないものを思い切って処分する工程です。ここでの肝は、作業の前に「捨てる基準」を先に決めること。「1年間使っていない書類は廃棄」「最終更新から2年経過したファイルはアーカイブへ」のように基準を数値で決めておくと、個人の判断に迷いがなくなります。神奈川労働局も、5Sの出発点として「使うもの・使わないものの明確な判断基準が確立されているか」を公式チェック項目に挙げています(出典:神奈川労働局 5Sチェックリストの例(PDF))。

5S実務家の土方雅之氏(@hijk0909)も「溜めたら負け。モノ・情報・タスクが溜まると、時間・空間・探すムダと、混ざる・忘れるミスが生まれる」と発信しています。整理は”捨てる”のではなく、”溜めない状態に戻す”工程だと捉えると続けやすくなります。

手順2:整頓(Seiton)— 定位置・定量・表示で「探さない」をつくる

整頓は、残した必要なものを「誰でもすぐ取り出せて、すぐ戻せる」状態にする工程です。ポイントは3つ——①定位置(置き場所を決める)、②定量(持つ量の上限を決める)、③表示(ラベルや命名規則で見える化する)。

製造現場では、工具箱をウレタンで工具の形にくり抜く「姿置き」で、ひと目で欠品や戻し忘れが分かるようにします。オフィスの引き出しでも同じ手法が使えると、5S実務家の五十嵐諭氏(@n0XiNX3lU7aaNUL)は事務用品の姿置きの実例を紹介しています。「戻す場所が一目で分かる」から、整頓状態が維持されるわけです。この「使用頻度が高いものほど手元に置く」という考え方は、動作のムダを省くECRSの4原則とも相性がよく、あわせて使うと整頓の精度が上がります。

手順3:清掃(Seisou)— 大掃除でなく「5分の日常清掃」にする

清掃は、きれいにするだけでなく「点検」を兼ねる工程です。ここを”月イチの大掃除イベント”にした瞬間に、5Sは形骸化します。1日5分、退勤前に机上をリセットする——このくらい負荷を小さくして、日常業務に溶かし込むのがコツです。オフィスの清掃は見た目の問題にとどまりません。厚生労働省の職場のあんぜんサイトによれば、転倒災害は労働災害全体の約2割(平成27年で22%)を占め、通路や床の整理整頓不足によるつまずきが主因の一つです(出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「転倒災害」)。清掃・整頓は、安全衛生の面でも実利があります。

手順4:清潔(Seiketsu)— 良い状態を”仕組み”で維持する

清潔は、整理・整頓・清掃で到達した状態を維持する工程です。人の「気をつけます」に頼ると必ず元に戻るので、チェックリストと定期棚卸しで仕組み化します。「毎週金曜に共有ドライブの新規ファイルを所定フォルダへ振り分ける」「月末に不要品ゼロを確認する」など、維持の作業をカレンダーに固定するのが有効です。維持のルールは、業務手順として明文化しておくと定着が早まります(→業務標準化の進め方)。

手順5:しつけ(Shitsuke)— 教育・共有・評価で全員の習慣にする

しつけは、決めたルールを全員が自然に守れる状態まで習慣化する工程です。ここで大事なのは、ルールを増やしすぎないこと。守れないルールを10個作るより、守れるルールを3個に絞るほうが定着します。新人研修に5Sルールを組み込む、朝礼で「今週片づけたムダ」を一言共有する、評価項目に軽く反映する——といった”しかけ”で、個人の頑張りに依存しない状態をつくります。

モノより「情報の5S」がオフィスの本丸?

オフィスの5Sで最も効果が大きいのは、机や書庫よりも共有ドライブ・ファイル・書類という「情報の5S」です。ここが散らかっていると、全員が毎日「探す」に時間を溶かし続けます。

私たちが間接部門・バックオフィスのBPR支援に入るとき、最初に共有ドライブを診る「情報の5S 3点チェック」(当社のBPR支援で使う簡易フレーム)が、散らかりの正体をあぶり出します。この3点は、ほぼ例外なくどの現場でも起きています(自社の支援経験に基づく所感。業種・規模を丸めた匿名化・概数)。

  • ①共有ドライブが迷宮化している:似た名前のフォルダが階層違いで複数あり、目的のファイルにたどり着けない。「とりあえず”共有”フォルダ直下に置く」が横行している。ある管理部門の支援では、棚卸ししたファイルのおよそ3割が重複・不要データで、削除するだけでフォルダの見通しが一段良くなりました。
  • ②ファイル名のルールが人によって違う:最終版『最終版2』『これが本当の最終』が並び、どれが最新版か本人しか分からない。ある現場では、依頼のたびに最新版の特定だけで1件あたり数分を要していたのが、命名規則を日付_案件_内容_版数に統一した後は、一覧で即座に判別できるようになりました(いずれも匿名化・概数)。
  • ③原本が個人PCのデスクトップに退避している:担当者が休むと誰も出せない。これは典型的な属人化の温床です。原本を共有側の定位置に戻すだけで、突発休みへの耐性が上がります。

情報の5Sは、モノの5Sと同じ順番で回せます。整理=不要ファイル・重複データ・古いメールを捨てる/整頓=フォルダ構成とファイル命名規則を決める(例:日付_案件_内容_版数)/清掃=定期的に「置きっぱなし」を所定フォルダへ/清潔=命名・保存ルールを文書化して維持/しつけ=新メンバーにルールを教える。紙とデータを両輪で整えると、探すムダが一気に減ります。紙の削減についてはペーパーレス化の進め方、間接部門全体のムダ取りは間接業務の効率化アイデアもあわせてご覧ください。

現場主義の視点で言えば、情報の5Sは「まず現状を見える化する」ところから始めるのが確実です。どこに・何が・どれだけあるのかを棚卸しする手順は業務可視化のやり方が入口になります。

オフィスの5Sの効果は?

オフィスの5Sの効果は、①探す時間の削減、②ミス・事故の減少、③属人化の解消と心理的な働きやすさの3つに整理できます。見た目がきれいになること自体が目的ではありません。

  • 探す時間が減る:情報の検索・保管には年間約120時間(コクヨ調査)がかかるとされます。前述の「情報の5S 3点チェック」で共有ドライブを整えると、この”探す・迷う”を直接削れます。実際に支援先では、重複・不要ファイルが約3割減り、最新版の特定が一覧で即完了するようになりました(匿名化・概数)。
  • ミス・事故が減る:最新版の取り違えや書類の紛失が減り、通路整頓で転倒災害(労災の約2割)のリスクも下げられます(厚労省 職場のあんぜんサイト)。
  • 属人化が解け、働きやすくなる:「あの人しか分からない」が減り、引き継ぎや突発休みに強くなります。散らからない環境は集中を保ちやすく、総務・バックオフィスの業務品質にも効きます(→総務業務の効率化)。

効果は「削減できた時間・件数」で必ず測り、見える化してください。改善の効果測定の考え方は業務改善の効果測定の方法で解説しています。

なぜオフィスの5Sは形骸化するのか?

オフィスの5Sが続かない原因は、ほぼ①掃除当番化、②写真提出の目的化、③ルール過多の3つに集約されます。手法を知らないから失敗するのではなく、運用設計を誤るから失敗します。

形骸化パターン 何が起きるか 回避策
掃除当番化 5S=清掃だけになり、整理・整頓・情報が手つかず 「捨てる」と「探さない」を成果指標に置く
写真提出が目的化 きれいに見せる作業が増え、業務が増える本末転倒 目的を「探す時間の削減」に固定して測る
ルール過多 守れないルールが積み上がり、誰も守らなくなる ルールは3つに絞る。守れる数だけ残す

私たちの支援経験でも、5Sが「掃除当番の割り当て表」に矮小化しているケースは非常に多いです(匿名化した所感)。5Sの主眼は清掃ではなく、整理(捨てる)と整頓(探さない)で仕事のムダを減らすことにあります。ここを取り違えないだけで、形骸化の大半は防げます。業務改善が失敗する共通の構造は業務改善が失敗する原因と回避策でも整理しています。

5Sを定着させるコツは?

5Sを定着させるコツは、「小さく始める・成果を測る・仕組みに埋め込む」の3点です。個人の意識やモチベーションに頼る限り、5Sは必ず元に戻ります。

  1. 小さく始める:1エリア・2週間から。全社一斉にやらない。
  2. 成果を数字で見せる:「探す時間が○分減った」「不要品を○箱捨てた」を掲示する。数字より”誰の改善か”を名前で見せると横に広がる。
  3. 仕組みに埋め込む:維持作業をカレンダー・チェックリスト・新人教育・評価に固定し、「やる気」に頼らない状態にする。ルールは業務手順として標準化しておく。

近年は、情報の5S(整頓)を仕組み側で支える手段も増えています。共有ドライブの命名規則をテンプレート化する、不要ファイルの棚卸しを定期タスク化する、といった小さなDXから始めると、人の頑張りに頼らずに整頓状態を保てます。生成AIやツールで間接業務そのものを軽くする発想は間接業務の効率化アイデアにまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. オフィスの5Sはどこから始めるべきですか?
A. 「1エリア・2週間・推進担当」を決めて、整理(捨てる)から始めます。全社一斉ではなく、経理の書庫や共有ドライブの1フォルダなど範囲を絞り、捨てる基準(例:1年使っていない書類は廃棄)を先に決めてから着手すると迷いません。

Q. 5Sの正しい順番は?整頓から始めてもいいですか?
A. 整理→整頓→清掃→清潔→しつけの順が原則です。整頓から始めると、不要品にきれいな定位置を与えるだけになりがちです。まず整理で「要らないもの」を減らし切ってから整頓に進みます。

Q. オフィスの5Sと製造業の5Sは何が違いますか?
A. 対象が違います。製造業は工具・部品という「モノ」が中心ですが、オフィスは書類と共有ドライブの中の「情報」が主役です。モノの5Sだけで終わらせず、ファイル名・フォルダ・データの「情報の5S」まで広げることが、オフィスでは効果の分かれ目になります。

Q. 5Sが掃除だけで終わってしまいます。どうすれば定着しますか?
A. 成果指標を「清掃」から「探す時間の削減・不要品の削減」に置き換えてください。そのうえで、維持の作業をチェックリストや新人教育、評価に組み込み、ルールは守れる3つに絞ります。個人の気合いでなく、仕組みで維持するのが定着のコツです。


現場の情報とモノを、5Sで”探さない職場”に

オフィスの5Sは、机の見た目を整える活動ではなく、「探す・迷う・間違える」ムダを、モノと情報の両面から減らす業務改善です。整理から始め、情報の5Sまで広げ、仕組みで定着させる——この順番を外さなければ、形骸化は防げます。

キュリオシティは、間接部門・バックオフィスの業務可視化からBPR・情報整理の仕組み化、生成AI活用までを、”現場主義 × AI”で伴走支援しています。

5Sを「掃除大会」で終わらせず、探さない職場をつくる第一歩に、ぜひご活用ください。


監修:大槻 伸夫(キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO)/間接部門・バックオフィスのBPRおよび生成AI活用支援に従事。本記事の事例は守秘のため業種・規模を丸めた匿名化・概数で記載しています。


監修者

大槻 伸夫/ 代表取締役 CEO

キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO。「現場主義×AI」を掲げ、業務改善(BPR)・PMI・経営支援・AIプロダクト開発を一気通貫で支援。クライアント現場での実行支援を重視する。

業務改善・PMIのご相談はキュリオシティへ

記事で紹介したテンプレートの配布や、貴社課題に合わせた無料相談を行っています。

BACK TO INDEX