2026.09.27

AIプロダクト

経営企画の生成AI活用|市場調査・資料作成・分析の下ごしらえを速くする

※本記事は2026年9月時点の公開情報と、当社が中堅・中小企業の経営支援(中期経営計画・経営会議・予実管理)の現場で生成AIを適用してきた実務にもとづきます。守秘のため、事例は業界・規模・打ち手・相対効果のみに匿名化し、実名・実数は出していません。

「経営企画にも生成AIを、と言われるが、何を任せてよいのか分からない」「AIが書いた市場規模や示唆を経営会議に出して、間違っていたら誰が責任を取るのか」——経営企画部門の方から、こうした相談を受ける機会が増えました。

先に結論です。経営企画の生成AI活用は「①市場調査の一次整理 ②資料のドラフト ③データ分析の下ごしらえ」の3領域に絞ると成果が出やすく、示唆出しと意思決定は人が担う、と最初に切り分けるのが成功の条件です。 経営企画の仕事は「調べる・書く・数える」の下ごしらえに多くの時間を取られ、本来の「考える・決める」に時間を割けていないことが多いからです。

この記事の監修:大槻 伸夫(キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO)。”現場主義 × AI” を掲げ、中堅・大手企業の業務改善(BPR)、中期経営計画の策定支援、生成AIの社内導入を伴走支援。自社の経営企画業務にも生成AIを組み込み、試行錯誤してきた経験をもとに解説します。


経営企画で生成AIはどこに使える?(下ごしらえの3領域)

結論:経営企画で生成AIが効くのは「調べる・書く・数える」の下ごしらえで、当社ではこれを「経営企画AIの3つの下ごしらえ」と呼んでいます。 示唆出し・意思決定という”考える・決める”工程は人が持ちます。

経営企画の業務を分解すると、「材料を集めて整える」工程と「材料から判断を導く」工程に分かれます。生成AIが得意なのは前者です。

領域 生成AIに任せる下ごしらえ 人が担う判断
①市場調査の一次整理 公開資料・ニュースの要約、論点の洗い出し、競合情報の比較表化 情報の信頼性評価、自社にとっての意味づけ
②資料のドラフト 経営会議資料・中計の骨子、議事録からの論点整理、文章の推敲 ストーリーの採否、メッセージの最終決定
③データ分析の下ごしらえ 予実データの整形、差異の一次コメント、集計用の数式・コード作成 数値の確定、差異の真因特定、打ち手の判断

公的な整理でも同じ考え方が示されています。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIを業務で使う「AI利用者」に対し、出力の検証や適切な利用範囲の設定を求めています。生成AIを”判断する主体”ではなく”材料を用意する係”として使うことが、ガイドラインにも沿った使い方です。


①市場調査の一次整理はどう速くなる?

結論:市場調査は「読む量」を生成AIで圧縮し、人は「どれを信じ、何を意味するか」に集中します。 数値は必ず一次ソースで裏取りするのが鉄則です。

新規事業の検討や中計の外部環境分析では、業界レポート、統計、決算資料、ニュースを大量に読み込む必要があります。生成AIに任せやすいのは次の作業です。

  • 資料の要約と論点抽出:数十ページの白書や決算説明資料を読ませ、「市場の成長要因」「規制の動き」「主要プレイヤーの戦略」を箇条書きにさせる
  • フレームへの仕分け:集めた情報をPEST分析や3C分析の枠に振り分けた”たたき台”を作らせる
  • 競合比較表の作成:各社の公開情報から、価格帯・ターゲット・強みを同じ軸で並べた比較表を作らせる

当社の経営支援の現場では、外部環境分析の一次整理(資料を読んで枠に仕分けるまで)の体感工数が、おおむね半分程度に縮まりました(相対値)。一方で、生成AIは市場規模や成長率などの数値をもっともらしく作ってしまうことがあります(ハルシネーション)。数値と固有名詞は、生成AIの出力ではなく原典から転記する——このルールを最初に決めておくことが重要です。

プロンプトの型(例):
「以下の資料を読み、①市場の成長要因 ②阻害要因 ③主要プレイヤーの動き に分けて箇条書きで整理してください。数値を記載する場合は、資料内の該当箇所(ページ・段落)を必ず併記し、資料にない数値は書かないでください。」


②経営会議資料・中計のドラフトはどこまで任せられる?

結論:資料は「白紙から書く」をやめ、生成AIに骨子とドラフトを作らせて人が直す運用に変えると速くなります。 ただし、伝えたいメッセージ(結論)は人が先に決めます。

経営企画が作る資料は、経営会議のアジェンダ資料、中期経営計画の骨子、取締役会への報告、社内向けの方針説明など多岐にわたります。生成AIが効くのは次の場面です。

  • 骨子づくり:「結論→根拠→打ち手→論点」の順に、スライド構成案を複数出させる
  • 議事録からの論点整理:前回の経営会議の議事録を読ませ、決定事項・保留論点・宿題を一覧化させる
  • 推敲と言い換え:同じ内容を「取締役向け(簡潔)」「現場向け(具体的)」に書き分けさせる

ある中堅製造業の経営企画部門(匿名)では、月次の経営会議資料を「数値表は既存のExcel、コメント欄と論点整理は生成AIのドラフトを人が直す」運用に切り替え、資料作成の前段にかかる時間を大きく減らしました。浮いた時間を、事業部へのヒアリングや打ち手の検討に回せたことが最大の効果でした。

注意点は、生成AIに結論まで考えさせないことです。結論を任せると、どの会社にも当てはまる一般論のスライドができ上がります。「今期の最重要論点は○○、根拠は△△」と人が先に決め、その肉付けを任せるのが正しい順番です。会議資料の型は経営会議の進め方|意思決定が早くなるアジェンダと資料の型、文書作成全般での使い方は生成AIで文書作成を効率化|提案書・報告書・メールの実務活用にまとめています。


③データ分析の下ごしらえは何を任せる?

結論:予実管理やKPI分析では、生成AIに「整える・一次コメントを書く」まで任せ、数値の確定と真因の特定は人が行います。

経営企画のデータ業務は、各部門から集まるExcelの形式を揃え、予算と実績を突き合わせ、差異にコメントを付ける作業が大半です。生成AIに任せやすいのは以下です。

  • データの整形:部門ごとにバラバラな勘定科目名や表記の揺れを揃える変換ルール・数式を作らせる
  • 差異の一次コメント:予実差異の大きい項目を抽出し、「前年同月比」「計画比」の観点で下書きコメントを書かせる
  • 集計コードの作成:ピボットやグラフ作成の手順、Pythonのコードを書かせる

当社の現場で繰り返し感じるのは、生成AIが書く差異コメントは「何が起きたか」までは正確でも、「なぜ起きたか」は外れやすいという点です。売上減の真因が「大口顧客の発注時期ずれ」なのか「値下げ競争」なのかは、事業部の現場に聞かないと分かりません。生成AIの一次コメントを”仮説リスト”として持って現場に聞きに行く——これが最も効率のよい使い方でした。

予実管理の仕組みそのものは予実管理のやり方|月次でPDCAを回す仕組みとフォーマット、生成AIによる集計・可視化の具体的な手順は生成AIでデータ分析を効率化|集計・可視化・示唆出しの実務での使い方で詳しく解説しています。


なぜ示唆出しと意思決定は人が担うべきなのか?

結論:示唆は「自社の文脈」と「責任」がセットで初めて価値を持つため、生成AIではなく人が担います。

生成AIは公開情報から一般的な示唆を出すのは得意ですが、自社の強み、組織の実行力、社長の意思、取引先との関係といった”書かれていない文脈”を知りません。その結果、出てくる示唆は「DXを推進すべき」「高付加価値化を図るべき」といった、どの会社にも言える一般論になりがちです。

また、経営判断には説明責任が伴います。「AIがそう言ったから」は、取締役会でも金融機関の前でも通用しません。AI事業者ガイドラインでも、AIの出力をそのまま使うのではなく、人間が判断に関与すること(人間中心の考え方)が基本理念として示されています。

当社では、経営企画の生成AI活用を次の役割分担で設計しています。

  1. 生成AI:材料集め・整理・ドラフト(選択肢を広げる)
  2. 経営企画担当:裏取り・意味づけ・仮説の絞り込み(選択肢を絞る)
  3. 経営陣:意思決定と責任(選ぶ)

この線を最初に引いておくと、現場の「AIに仕事を奪われる」不安も、経営陣の「AIの出力を信じてよいのか」という不安も、同時に解消できます。


経営企画で生成AIを使うときの注意点は?

結論:「数値の裏取り」「機密情報の入力範囲」「出典の記録」の3つのルールを先に決めてから使い始めます。

経営企画は、未発表の業績、M&Aの検討、人事情報など、社内でも最も機密性の高い情報を扱う部門です。

  • 数値の裏取り:市場規模・成長率・競合の売上など外部数値は、必ず原典で確認して転記する
  • 機密情報の入力範囲:未発表の決算数値、M&A検討中の社名、個人情報は、入力データを学習に使わない法人向け環境でのみ扱う。どこまで入れてよいかを社内規程で明文化する
  • 出典の記録:資料に載せる情報は、どの資料のどこから来たかを残し、後から検証できるようにする

機密情報の扱いは生成AIのセキュリティ対策|情報漏えいを防ぐ社内導入の要件、社内ルールの作り方は生成AI 社内利用規程の作り方|テンプレと盛り込むべき項目を参考にしてください。


経営企画の生成AI活用は何から始めればいい?

結論:月次で繰り返す「経営会議資料のコメント欄」か「外部環境の一次整理」から、1業務・1か月のPoCで始めるのが最短です。

繰り返し発生する業務ほど、効果が測りやすく、型も作りやすくなります。PoC(概念実証)は次の4点を決めてから始めます。

  1. 対象業務を1つに絞る:例)月次経営会議資料の予実コメント作成
  2. KPIを1つ決める:例)資料作成の所要時間を半分にする、差戻し回数を減らす
  3. 撤退基準を決める:例)1か月試して所要時間が2割以上減らなければ手順を見直す
  4. 人の確認工程を組み込む:数値と結論は必ず担当者と上長が確認する

PoC設計の詳しい考え方は生成AIのPoCの進め方|失敗しない設計とKPI・撤退基準、外部の支援を使って進める場合は生成AI開発・PoC支援|サービス内容と進め方・費用・事例で当社の進め方を紹介しています。

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まとめ:下ごしらえはAIに、考えて決めるのは人に

経営企画の生成AI活用は、「①市場調査の一次整理 ②資料のドラフト ③データ分析の下ごしらえ」という3つの下ごしらえに絞ると成果が出やすくなります。調べる・書く・数えるの時間を生成AIで圧縮し、浮いた時間を現場へのヒアリングや打ち手の検討に回す——これが経営企画にとっての本当の効果です。

一方で、示唆出しと意思決定は人が担います。数値は原典で裏取りし、機密情報の入力範囲を決め、出典を残す。この3つのルールを守れば、生成AIは経営企画の強力な下ごしらえ役になります。

生成AIで業務全般をどう効率化するかの全体像は生成AIによる業務効率化とは?仕組み・できること・始め方、中計そのものの作り方は中期経営計画の策定手順|現場が動く落とし込み方もあわせてご覧ください。


よくある質問(FAQ)

Q. 経営企画で生成AIは何から使い始めればいいですか?
A. 毎月繰り返す業務から始めるのがおすすめです。経営会議資料の予実コメントの下書きや、外部環境の情報を要約してPEST・3Cの枠に仕分ける作業は、効果が測りやすく、間違えても人の確認で修正できるため失敗リスクが小さい領域です。

Q. 生成AIが出した市場規模や成長率はそのまま使えますか?
A. そのままは使わないでください。生成AIはもっともらしい数値を作ることがあります。外部数値は必ず統計や業界レポートなどの原典で確認し、出典を明記して転記するルールにします。

Q. 生成AIに経営戦略の示唆まで出させてもよいですか?
A. 選択肢を広げる”壁打ち相手”として使うのは有効ですが、示唆の採否と意思決定は人が担います。生成AIは自社固有の文脈を知らないため一般論になりやすく、経営判断の説明責任も人にしか負えないためです。

Q. 未発表の業績やM&Aの情報を入力しても大丈夫ですか?
A. 入力データを学習に使わない法人向けの環境であることが前提です。そのうえで、どの情報をどの環境に入れてよいかを社内規程で明文化してから使います。特にM&A検討中の社名や個人情報は、入力範囲を厳しく絞ることをおすすめします。

Q. どれくらいの効果が見込めますか?
A. 業務によりますが、当社の支援では外部環境分析の一次整理や資料ドラフトの体感工数がおおむね半分程度になりました(相対値)。まずは1業務でKPIを1つ決めて実測し、効果が出た業務だけ横展開するのが確実です。


監修者

大槻 伸夫/ 代表取締役 CEO

キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO。「現場主義×AI」を掲げ、業務改善(BPR)・PMI・経営支援・AIプロダクト開発を一気通貫で支援。クライアント現場での実行支援を重視する。

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