2026.08.07

業務改善

業務の現状分析(As-Is)のやり方|可視化から課題を見つける手順

「業務改善のために現状分析(As-Is)をやりたいが、何をどこまで調べれば”課題”にたどり着くのか分からない」——改善プロジェクトの入り口で、こうしたご相談を最もよくいただきます。業務フローを描いてはみたものの、そこから先の「で、どこが問題なのか」で手が止まってしまうケースです。

結論から言えば、業務の現状分析(As-Is)は「① 棚卸し → ② フロー化 → ③ 定量化 → ④ 課題抽出」の4ステップで進めるのが最短です。多くの現場でつまずくのは、③の定量化を飛ばして「フローを描いたら分析が終わった気になる」点にあります。現状分析の目的は”きれいな図”を作ることではなく、改善すべき課題を根拠つきで見つけることです。

この記事では、業務フローの描き方そのものではなく、描いた現状からどうやって課題を発見するかという「分析・課題発見」の手順に絞って解説します。作図の作法を知りたい方は、先に業務可視化のやり方をご覧ください。本記事は、その可視化した情報を”読み解く”側の話です。


1. 結論:現状分析(As-Is)は「棚卸し→フロー化→定量化→課題抽出」の4ステップ

業務の現状分析は、次の4ステップに分けると迷いません。

業務の現状分析(As-Is)の4ステップ:棚卸し→フロー化→定量化→課題抽出
業務の現状分析(As-Is)の4ステップ:棚卸し→フロー化→定量化→課題抽出
  • ① 棚卸し:どんな業務が、誰によって、どれだけ行われているかを一覧で洗い出す
  • ② フロー化:業務の”流れ”(誰から誰へ・何を待って・どこで分岐するか)を図にする
  • ③ 定量化:各工程の時間・件数・待ち時間を数字で測り、”詰まり”を可視化する
  • ④ 課題抽出:数字と流れから、重複・手戻り・属人化などの課題を根拠つきで拾い上げる

DXの現状分析を扱う公的資料でも、現状把握は経営者と現場が現状・課題認識を共有するための出発点と位置づけられ、定性・定量の両面から捉えることが求められています(IPA・DX推進指標)。①②のヒアリング・フロー化が定性、③が定量にあたり、この両方をそろえて初めて④の課題抽出が説得力を持ちます。

なお、現状分析(As-Is)は業務改善全体の入り口です。全体像は業務改善の進め方5ステップ、改革の考え方はBPRとは?業務改善との違いと進め方で整理しています。


2. そもそも現状分析(As-Is)とは|「可視化」との違い

As-Is(アズイズ)とは「現状のありのままの姿」を指し、理想像であるTo-Beと対にして使います。現状分析とは、このAs-Isを事実ベースで把握し、あるべき姿とのギャップ(=課題)を明らかにする作業です。

ここで混同しやすいのが「可視化」と「分析」の違いです。

  • 可視化:業務やフローを”見える形”にする作業(フロー図・業務一覧を作る)
  • 分析:見える化した情報を”読み解き”、課題や原因を導く作業

つまり可視化はゴールではなく、分析の材料をそろえる工程にすぎません。フロー図を描いただけで満足してしまうと、「調査のための調査」に終わり、業務改善は一歩も進みません。現場の定性的な意見と事実が並んでいるだけのファイルが残る、というのはよくある失敗です。

現状分析の本番は、可視化した後の「定量化」と「課題抽出」にあります。全体工程のうち、この現状把握フェーズには3〜4割の労力を割くつもりで臨むのが目安です。ここが浅いと、後続の改善策がすべて的外れになります。


3. 現状分析のやり方【4ステップ】

STEP1:業務の棚卸し(洗い出し)

まず「どんな業務があるか」を一覧化します。部署・担当・頻度(日次/週次/月次)・所要時間・使用ツールを列で持つと、後の定量化がラクになります。粒度を揃えることが最大のコツで、粗すぎると課題が埋もれ、細かすぎると分析が終わりません。抜け漏れのない洗い出しの型は業務棚卸しの手順にまとめています。

このとき、管理者だけでなく実際の作業担当者からも聞くのが鉄則です。マネージャーは業務全体は把握していても、例外処理や小さな手作業までは見えていないことが多いためです。

STEP2:業務フローで流れを可視化する

棚卸しした業務の中から、問題がありそうな業務を選び、流れ(プロセス)を図にします。担当ごとにレーンを分けるスイムレーン形式にすると、「誰から誰へ・何を待って・どこで差し戻るか」が一目で分かります。記号の使い分けや粒度の作法は業務フロー図の作り方を参照してください。

分析の視点では、矢印が部署をまたぐ回数差し戻し(手戻り)の矢印に注目します。ここが後で課題になる”詰まり”の候補です。

STEP3:定量データで”詰まり”を測る

ここが現状分析の心臓部です。フローの各工程に、件数・処理時間・待ち時間の数字を乗せます。具体的には、次の列を持つ計測シートを1枚用意すると測りやすくなります。

工程名 担当 発生回数/月 1回あたり処理(分) 待ち時間(分) 発生条件・例外
請求書承認 経理課長 120 5 480 5万円超は役員承認

上の例では、処理そのものは5分なのに待ち時間が480分——「速く処理する」より「待ちをなくす」ほうが効くと、表を見ただけで判断できます。

特に見るべきは「処理そのものの時間」より、「承認待ち・確認待ち・資料の到着待ち」といった”待ち”の時間です。担当者がどれだけ速く作業しても、待ち時間は縮みません。フロー上で矢印が長く止まっている場所こそ、真っ先に手を打つべきボトルネックです。

数字の集め方は、可能ならシステムのログ(プロセスマイニング的な実データ)で裏を取ります。ログが取れない手作業は、担当者に1週間だけ実績を記入してもらう/代表的な1件をストップウォッチで実測すると、体感ではなく事実で語れます。ヒアリングで得た口述情報は理解しやすい反面、正確性・網羅性に欠けるため、「人経由の情報」をデータで検証する二段構えが有効です。

STEP4:課題を抽出して構造化する

定量化した事実から、課題を「症状」ではなく「原因」で束ねます。たとえば「残業が多い」は症状にすぎず、真因は「承認が1人に集中している(属人化)」かもしれません。症状 → 原因 → 影響(時間・コスト・リスク)の順に整理すると、次の改善提案でそのまま使えます。課題を根拠つきで構造化する具体的な進め方は業務改善コンサルティングでも解説しています。


4. 課題を見つける「5つの着眼点」

現状を眺めても課題が見えてこない——そんなときは、次の5つのサインを探すと発見が早まります。これは業務プロセスに問題が潜むときの典型的な兆候です。

  1. 重複入力:同じ情報を複数のシステム・台帳に何度も入力していないか
  2. 例外処理の多さ:「この場合だけは手作業で」というイレギュラーが常態化していないか
  3. 手戻り・差し戻し:後工程からの差し戻しで、同じ作業を繰り返していないか
  4. 属人化:特定の人しかできない業務がボトルネックになっていないか(→業務の属人化を解消する進め方
  5. KPIの不在:処理時間やリードタイムを測る指標がなく、良し悪しを判断できない状態になっていないか

この5点は、STEP3で数字を乗せた工程を見返すと必ずどこかに現れます。特に④属人化と③手戻りは、間接部門で成果が大きく出やすい着眼点です(関連:間接業務の効率化アイデア)。

現場での気づき:制約(ボトルネック)は、1つ解消すると必ず次の場所へ移動します。「ここを直せば終わり」ではなく、「次の詰まりはどこか」を想定し続けることが、現状分析を”1回で終わらせない”コツです。


5. 現状分析でありがちな3つの失敗と回避策

私たちが業務改善(BPR)の支援に入る中で、現状分析の段階でつまずく企業には共通のパターンがあります。ここでは守秘のため案件を匿名化し、傾向のみをお伝えします。

現状分析でありがちな3つの失敗
現状分析でありがちな3つの失敗

失敗① 可視化で満足してしまう:立派なフロー図はできたのに、数字(③定量化)がなく「で、どこが問題?」に答えられない。→ 回避策:作図の前に「測りたい数字(時間・件数・待ち)」を先に決める。

失敗② ヒアリングを鵜呑みにする:担当者の「忙しい」を額面どおり受け取り、実データで裏を取らない。→ 回避策:同じ業務を複数名に聞き、ログや実績で突き合わせる。

失敗③ 課題を挙げて終わる:課題が症状の羅列で、原因までたどれていない。→ 回避策:STEP4の「症状→原因→影響」で構造化する。

私たちが大手企業グループの事務・管理部門を支援した際も、この「業務一覧 → フロー → 定量化 → 課題」の順で丁寧に現状分析を行ったことで、30件を超える改善課題を根拠つきで抽出できました。このとき全工数のおよそ3〜4割を定量化フェーズ(STEP3)に投下しており、抽出された課題の過半は”処理そのもの”ではなく”待ち・手戻り”に由来していたというのが率直な所感です。裏を返せば、定量化を飛ばして体感で課題を挙げていたら、真因である”待ち”を見逃し、打ち手が的外れになっていたはずです。順番を飛ばすと課題の数も精度も一気に落ちます。実際の成果イメージは業務改善の事例集もあわせてご覧ください。


6. 現状分析を「改善」につなげる

現状分析はゴールではなく、改善の出発点です。抽出した課題は、次の3つに橋渡しして初めて価値になります。

  • To-Be設計とギャップ分析:理想の業務プロセス(To-Be)を描き、As-Isとの差=ギャップを埋める打ち手を決める
  • 優先順位づけ:影響度(効果)×実現性(手間)で、着手する課題を絞る
  • 提案・合意形成:経営や現場が動く提案書に落とす(→通る業務改善提案の書き方

なお、現状分析にかける期間と体制は、対象業務の広さで変わりますが、1部門・数業務なら2〜4週間、担当者への実績記入を1週間ほど挟む、という進め方が現実的です。使うツールは、Excelで棚卸しと計測シート → 業務プロセス分析(フロー図)はBPMN/作図ツール → 大量のシステムログがあるならプロセスマイニング、と規模に応じて使い分ければ十分です。最初から高価なツールを入れる必要はありません。

近年は、この現状分析そのものを効率化する動きも進んでいます。ヒアリングの文字起こしから課題の候補を自動抽出したり、業務ログを生成AIで要約したりと、”現場主義 × AI”で分析の初速を上げる余地は大きくあります。ただし、最後に「これは本当に課題か」を判断するのは人間です。AIは分析の下ごしらえを速める道具であり、意思決定を置き換えるものではありません。


まとめ:現状分析は「数字で詰まりを見つける」までがワンセット

業務の現状分析(As-Is)のやり方を、4ステップで整理しました。

  1. 棚卸しで業務を洗い出し
  2. フロー化で流れを見える化し
  3. 定量化で時間・件数・待ちを測り
  4. 課題抽出で症状を原因まで掘り下げる

可視化はあくまで材料集めです。③定量化までやって初めて、課題は根拠を持って見えてきます。まずは身近な1業務で、STEP1〜3を回してみてください。


無料ダウンロード:業務棚卸しテンプレート

現状分析の第一歩「棚卸し」を、そのまま始められるテンプレートをご用意しました。部署・担当・頻度・所要時間を埋めるだけで、定量化と課題抽出の土台になります。

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「自社の現状分析をどこから手をつければいいか相談したい」という方は、無料相談はこちらからお気軽にお問い合わせください。現場に入り、課題の抽出から改善・定着・AI化までご一緒します。


監修:大槻 伸夫(キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO)
現場主義 × AI を掲げ、製造・商社・金融など複数業種で業務改善(BPR)・PMI・生成AI導入を支援。事業会社の現場に入り込み、業務の可視化・課題抽出から改善の定着・AI化までを一気通貫で伴走している。


監修者

大槻 伸夫/ 代表取締役 CEO

キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO。「現場主義×AI」を掲げ、業務改善(BPR)・PMI・経営支援・AIプロダクト開発を一気通貫で支援。クライアント現場での実行支援を重視する。

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