2026.08.21

PMI

M&A仲介とFAの違い|どちらに依頼すべきか中小M&Aでの選び方

※本記事は2026年8月時点の公開情報(中小企業庁の公的資料・業界の相場情報)と、当社のM&A買い手支援・PMI(買収後統合)支援の実務にもとづく内容です。守秘案件は業界・規模・概要のみに匿名化し、実名・実数・優劣の断定は避けています。

「M&A仲介とFAって、名前は似ているけど何が違うの?」「うちのような中小企業は、どちらに頼めばいいのか」——M&Aを初めて検討する経営者から、最も多く受ける質問のひとつです。

先に結論をお伝えします。M&A仲介とFAの違いは「誰の味方に立つか」の一点です。仲介は売り手と買い手の双方と契約して中立的にまとめる立場(両手)、FAは依頼した一方だけの利益を最大化する立場(片手)です。この一点さえ押さえれば、手数料・利益相反・支援範囲の違いはすべてそこから説明できます。

この記事では、両者の違いを表で整理したうえで、なぜ「利益相反」が論点になるのか(中小企業庁の中小M&Aガイドライン第3版の改訂ポイント)、手数料はどう違うのか、そして中小企業は結局どちらに依頼すべきかを、当社の買い手・PMI支援の現場所感を交えて解説します。記事末では判断に使えるFAQと、依頼先選びで外さない5つのチェックもまとめました。

この記事の監修:大槻 伸夫(キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO)。”現場主義 × AI”を掲げ、中小企業の買い手支援・M&A後のPMI(買収後統合)を伴走支援。DD(デューデリジェンス)で見た論点を統合計画へつなぐところまでを一貫して手がける。

M&A仲介とFAの違いは?一言でいうと「誰の味方か」

M&A仲介は売り手・買い手の双方と契約して中立にまとめる立場、FAは片方の依頼者だけの利益を代弁する立場です。前者を「両手」、後者を「片手」と呼びます。まずは全体像を表で押さえてください。

比較軸 M&A仲介 FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
契約の相手 売り手・買い手の双方と契約(両手) どちらか一方と契約(片手)
立場 双方に中立。成約に向け調整 依頼者一方の利益を最大化
手数料を払う人 売り手・買い手がそれぞれ支払う 契約した自社側だけが支払う
得意な役割 相手探し〜条件調整〜成約まで一貫 企業価値評価・条件交渉・DD対応など意思決定支援
向く場面 中小M&A、友好的・スピード重視 大型・複雑案件、シビアな価格交渉

仲介は「双方の事情を把握してまとめる力」が強みで、条件の折り合いをつけて成立まで運びやすい。一方でFAは「自分の依頼者の利益だけを見て動く」ため、価格や条件を一歩踏み込んで交渉できます。どちらが優れているという話ではなく、役割が違うと理解するのが出発点です。

なぜ「両手(仲介)」だと利益相反が論点になるの?

仲介は売り手・買い手の双方から報酬を受け取る構造上、「どちらかに肩入れすると、もう一方が不利になる」という利益相反のおそれが構造的に生じるからです。中立でまとめる強みと、利益相反のリスクは表裏一体なのです。

この点は制度面でも強化されています。中小企業庁は2024年8月30日に「中小M&Aガイドライン」を第3版へ改訂し(出典:中小企業庁/経済産業省リリース 「中小M&Aガイドライン」を改訂しました中小企業庁 中小M&Aガイドライン)、次のような対応を求めました。

  • 手数料と提供業務の明確化:業務の内容・質と、その対価となる手数料(相手方が払う手数料を含む)について、依頼者に説明すること
  • 利益相反事項の具体化:仲介者において禁止される利益相反行為を具体的に列挙
  • 買い手側の調査と報告:不適切な買い手を排除するため、買い手を調査し、その概要・結果を依頼者へ報告すること
  • 経営者保証の扱い:譲渡側の経営者保証が譲受側に移行しない等のリスクへの対応

つまり「両手だから危険」なのではなく、両手の構造を理解したうえで、利益相反についてきちんと説明できる支援者を選べるかが肝、というのが国の整理です。依頼前に「あなたは私と相手方、どちらからいくら受け取りますか」を率直に確認できるかどうかが、良い支援者を見分ける最初のリトマス試験になります。

手数料はどちらが高い?体系はどう違う?

仲介は売り手・買い手が“それぞれ”手数料を払い、FAは契約した自社側だけが払います。1社あたりの水準はどちらも「レーマン方式」の成功報酬と最低報酬で決まり、案件規模によって高い・安いは逆転する——これが結論です。代表的な手数料体系を整理します。

手数料の種類 内容 目安レンジ
着手金 契約時に支払う初期費用 0〜200万円(無料も増加)
月額報酬 支援期間中の固定費 月0〜200万円
中間金 基本合意時などに支払う 成功報酬の10〜20%程度
成功報酬 成約時に支払う(レーマン方式) 最低500〜3,000万円の設定が多い

レーマン方式は「取引金額の帯ごとに料率をかけ、金額が小さい帯ほど料率が高くなる」計算方式です。代表的な料率は次のとおりです。

取引金額の帯 料率(目安)
5億円以下の部分 5%
5億円超〜10億円の部分 4%
10億円超〜50億円の部分 3%
50億円超〜100億円の部分 2%
100億円超の部分 1%

ここで中小M&Aで見落としがちなのが最低成功報酬です。たとえば取引3億円なら計算上は「3億円×5%=1,500万円」ですが、最低報酬が2,000万円に設定されていれば支払額は2,000万円(実質約6.7%)になります。取引額が小さくても最低報酬(500〜3,000万円の設定が多い)が固定でかかるため、取引額が数千万円規模だと“実質の料率”が二桁%に達することも珍しくありません。小規模案件ほど、この最低報酬の影響を必ず総額で確認してください。

現場の所感を正直に言えば、手数料は「安いかどうか」より「登録の有無・利益相反の説明・買い手調査の有無」で見たほうが、結果的に安全です。安さだけで選んで、成約後のPMIでつまずけば、削った手数料の何倍もの損失が出かねません。なお、より詳しい料金の内訳は「M&Aの手数料相場」を扱う別記事で解説予定です(本記事では概観にとどめます)。

中小企業はM&A仲介とFAのどちらに依頼すべき?

多くの中小M&Aでは、まず一貫支援に強い仲介が現実的な選択肢になります。ただし価格・DD・PMIなど“突っ込みどころ”がある局面では、買い手側にFA的な第三者を併用するのが有効です。当社が依頼先を判断するときに使う「依頼先を決める4つの問い」を紹介します(この4問は「仲介かFAか」という“形態”を決めるためのもの。選んだ支援者が信頼できるかは、次章の「5つのチェック」で見極めます)。

  1. 株主は経営者に集約されているか? … 経営者=ほぼ唯一の株主なら、株主間の利害調整が少なく、中立の仲介でまとまりやすい。多数の少数株主がいるなら片手のFAで自社利益を守る比重が上がる。
  2. 相手はもう決まっているか? … 相手探しから頼むなら候補ネットワークを持つ仲介。相手が決まっていて条件交渉が主戦場なら片手のFA。
  3. 価格・条件で強く交渉したいか? … 「多少条件が悪くても円満・スピード優先」なら仲介、「1円でも有利に」ならFA。
  4. 買収後の統合(PMI)まで見据えているか? … 買い手は特に、成約後の統合設計まで見る支援者かどうかで結果が大きく変わる。

当社の買い手支援の現場でも、この併用が効いた場面があります。たとえば製造業・年商十数億円規模の買収案件では、相手探しと基本合意までは仲介が一貫して進める一方、DD段階で買い手側に第三者(FA的な立ち位置)を入れたことで、簿外に近い労務・在庫まわりの論点を早期に洗い出し、そのまま100日プラン(統合計画)へ引き継げたケースがありました(業種・規模はレンジ表記、実名・実数は非開示)。仲介に任せきりだと「まとめる力」は働いても、買い手固有のリスク検証までは手が回りにくい——ここに第三者を配置した形です。仲介かFAかの二者択一ではなく、局面ごとに味方を配置するという第三の解と捉えてください。

依頼先を選ぶ前に必ず確認する5つのチェック

役割の違いを踏まえたうえで、実際に依頼先を選ぶ際に当社が必ず確認する勘所です。

  • M&A支援機関に登録しているか … 中小企業庁の登録制度に登録された支援機関なら、事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)の対象にもなり得る。
  • 利益相反を自分の言葉で説明できるか … 「双方からいくら受け取るか」を率直に開示できるか。
  • 買い手(相手方)の調査をするか … 不適切な買い手を排除する調査と報告の有無。
  • 手数料“総額”の見通しを出せるか … 着手金・中間金・最低報酬まで含めた総額シミュレーション。
  • 成約後のPMIまで視野に入れているか … 「売って(買って)終わり」ではなく統合まで見るか。

依頼後を見据える:成約はゴールではなくPMIが本番

仲介・FAのどちらを選んでも、M&Aは成約した瞬間が“スタート”です。買い手にとっては、買った後の統合(PMI)で想定したシナジーを出せて初めて投資が回収できます。ここが崩れると、支払った手数料以上の損失につながります。

「仲介とFA、うちはどちらに頼むべきか」「この手数料は妥当か」「買った後の統合まで見てほしい」——判断に迷ったら、無料相談で現状をお聞かせください。買い手の立場に立ち、成約からPMIまでを見据えて整理します。

よくある質問(FAQ)

Q. M&A仲介とFA、そもそも何が違うのですか?
A. 契約する相手が違います。仲介は売り手・買い手の双方と契約して中立にまとめる立場(両手)、FAは一方だけと契約してその依頼者の利益を最大化する立場(片手)です。手数料や利益相反の違いも、この「誰の味方か」から生じます。

Q. 中小企業はどちらに依頼するのが一般的ですか?
A. 経営者にほぼ株式が集約されている中小M&Aでは、相手探しから成約まで一貫して任せられる仲介が選ばれる傾向にあります。ただし価格交渉やDD、買収後の統合を重視する場面では、買い手側にFA的な第三者を併用するのも有効です。

Q. 仲介は利益相反が心配です。避けるべきですか?
A. 避けるべきなのは「利益相反を説明できない支援者」であって、仲介という形態そのものではありません。中小M&Aガイドライン第3版でも、手数料の明示・利益相反の具体化・買い手調査が求められています。依頼前にこれらを率直に説明できるかで見極めてください。

Q. 手数料は仲介とFAでどちらがお得ですか?
A. 一概には言えません。仲介は双方が手数料を払い、FAは自社だけが払いますが、金額の中心はどちらも成功報酬(レーマン方式)で、最低報酬が設定されるのが一般的です。安さより「総額の見通し」と「登録・利益相反説明の有無」で選ぶほうが、成約後を含めて安全です。


監修者

大槻 伸夫/ 代表取締役 CEO

キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO。「現場主義×AI」を掲げ、業務改善(BPR)・PMI・経営支援・AIプロダクト開発を一気通貫で支援。クライアント現場での実行支援を重視する。

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記事で紹介したテンプレートの配布や、貴社課題に合わせた無料相談を行っています。

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