2026.10.19

業務改善

DXコンサルの選び方|提案書で見極める3つの問いと比較ポイント

DXコンサルは、提案書にAIを使わない案・小さな最初の発注・社内に残る進め方があるかで選びます。

DXコンサルを比較すると、どの会社も「戦略から実行まで伴走」「豊富な実績」と書いています。会社紹介のページを読み比べても差は見えません。差が出るのは、自社の業務を見せたあとに出てくる提案書です。

当社は2026年、本社と複数の販売店を持つ自動車販売会社から「社内で安全に使える生成AIを入れたい」という相談を受けました。本社の10業務を1件ずつ評価して打ち手を32案並べたところ、AIを使わない打ち手が18案(56%)ありました。相談の入口がAIでも、業務を見ると半分以上はAI以外の手段が候補に挙がります。この集計をもとに、DXコンサルの「提案書を見極める3つの問い」を紹介します。あわせて、選ぶ前に自社の現在地を測る経済産業省の「DX推進指標」の使い方と、費用の比べ方も説明します。

※事例は社名・システム名・担当者名を伏せ、件数と割合のみで示します。効果は導入前の見込み評価で、実績値ではありません。


DXコンサルにはどんな種類がある?

DXコンサルは出自で4つに分かれます。どれが良いかではなく、自社の課題がどの段階にあるかで向き不向きが決まります。

種類 得意なこと 向いている会社 注意点
戦略系・総合系ファーム 全社構想、事業モデルの変更 大企業、全社変革 費用が大きく、実行は別会社になりやすい
IT・システム系 基幹システム刷新、要件定義、開発 作るものが決まっている会社 自社の製品・得意技術に寄りやすい
ツール・SaaSベンダー系 特定ツールの導入と定着 入れたいツールが決まっている会社 打ち手がそのツールの範囲に限られる
業務改善・中小特化型 業務の見える化、小さな改善の積み上げ 何から始めるか決まっていない会社 大規模開発は他社と組む必要がある

種類を絞ったら、提案を頼む前に「入口の条件」を確かめます。一般的な比較記事が挙げる得意領域・実績・担当者・体制は、次のように確かめると空振りしません。

入口の条件 確かめ方
実績 自社と同じ規模・同じ業務の事例を1件、「最初に何をして、何が変わったか」の順で話してもらう
担当者 提案の場に、実際に作業する担当者が出てくるか。営業担当だけで終わらないか
体制 自社側に何人・週何時間の参加を求めるかを、相手から先に言ってくるか

業務改善の範囲で会社を比べる観点はBPRコンサル会社の選び方、AIを作る会社の比べ方は生成AI開発会社の選び方で詳しく紹介しています。本記事はその先の、提案書の中身の見極め方に絞ります。


選ぶ前に、自社の現在地はどう測る?

相談の前に、経済産業省とIPAの「DX推進指標」で自社の成熟度を自己診断しておくと、コンサルに頼む範囲が決まります。

DX推進指標は、経営とITの両面から自社のDXの進み具合を測る無料の自己診断です。各項目を0(未着手)〜5の6段階で評価します。2026年2月13日には、データ活用・デジタル人材の育成・サイバーセキュリティなどを取り入れた内容に改訂され、4月から改訂版での提出が始まりました。

IPAが2026年5月に公表した分析レポート(1,164件)では、現在の成熟度の平均は1.98、目標は3.51でした。レベル4以上の企業は全体の3%です。多くの会社は「一部の部署で取り組みが始まった」段階にいます。

自己診断の結果は、コンサルへの頼み方に直結します。

自己診断の結果 頼む範囲の目安
0〜1(経営の方針がまだない) 方針づくりと、業務の現状把握から
1〜2(一部の部署で始まった) 部署をまたいだ業務の見える化と、最初の打ち手の選定
3以上(全社で取り組んでいる) 個別のシステム化・データ基盤など、範囲を決めた発注

診断の点数そのものより、「自社はどの項目が低いと思っているか」を言葉にして持っていくことが大切です。これがないと、コンサルの得意分野がそのまま自社の課題にされます。DXの基本の進め方は中小企業のDXの進め方をご覧ください。


生成AIの相談で業務10件を見たら、何が分かった?

「生成AIを入れたい」という相談でも、業務単位で打ち手を並べると32案中18案がAIを使わない打ち手でした。すぐ着手できる難易度「低」の7案は、すべてAI以外です。

最初のご相談は「社外の生成AIには業務データを出せないので、社内専用のAIを用意したい」というものでした。当社はその提案とあわせて、本社の業務フロー10件(日報の集計、中古車の査定、勤怠の集計、店舗からの問い合わせ対応、Web予約の受付、入庫のお礼メールなど)を1件ずつ見て、打ち手を32案に分けて評価しました。

業務10件・打ち手32案の集計。難易度「低」の7案はすべてAIを使わない打ち手
業務10件・打ち手32案の集計。難易度「低」の7案はすべてAIを使わない打ち手

集計して分かったことは3つです。

  1. AIを使わない打ち手が18案(56%):内訳は、システム同士の連携・入力画面の設計・ルールでの自動判定が10案、決まった手順を自動で回すRPAが4案、両者の組み合わせが4案。たとえば「メール配信の対象外を1件ずつ目で確認する」作業は、AIではなく条件で自動的に外す仕組みで足ります。なお、AIを含む14案の中にも「ルールで十分」と注記した案(データの不整合の検知など)が入っているので、56%は控えめな数字です
  2. すぐ着手できる案は全部AI以外:難易度「低」の7案はすべてAIを使わず、試す期間の目安は2〜4週間でした。効果「大」と評価した14案でも、8案はAI以外です
  3. AIの案しか挙がらなかった業務は2つ:10業務のうち8業務には、AIを使わない選択肢がありました。AIの案だけが並んだのは、中古車の傷を画像で見る査定と、店舗からの問い合わせにマニュアルを引いて答える業務の2つです

進め方も、AIから始めない順番になりました。最初の段階で定型作業をRPAで自動化し、並行して問い合わせ対応のAIを小さく試します。画像AIや帳票の読み取りは次の段階で効果を確かめ、システム同士の連携は投資が大きいので中期の段階に置きました。

その後の9月には、7つの事業部の担当者に集まっていただき、まず生成AIの勉強会で「何ができるか」をそろえました。そのうえで、①あるべき姿 → ②いまの業務 → ③業務フローの資料化 → ④差の洗い出し、の順で進めています。相談の入口は「AIを入れたい」でも、実際の作業は業務をそろえるところから始まりました。


DXコンサルの提案書を見極める「3つの問い」とは?

提案を受けたら、「AIを使わない案はどれか」「2〜4週間で終わるAI以外の打ち手が最初の契約に何案あるか」「社員が自分で改善を回せるまで何回で渡すか」の3つを聞きます。

前の章の集計を、発注する側の確認項目に直したのが次の3つです。

問い 聞き方の例 良い答え
① AIを使わない案はどれか 「この提案のうち、AIやツールを使わずに済む打ち手はどれですか?」 業務ごとにAI以外の選択肢を示し、AIが要る業務を絞って説明できる
② 最初の契約に、すぐ終わるAI以外の案は何案あるか 「最初の契約に、2〜4週間で終わるAIを使わない打ち手は何案入っていますか?」 対象業務と案の数、期間を即答できる。AIの試行は別の段階に分けている
③ 社員が自分で回せるまで何回で渡すか 「改善の進め方を、社員が自分で回せるまで何回の作業で渡しますか?」 回数と、渡し終えたかを何で判断するかを答えられる

問い①:AIを使わない案はどれか

当社の集計では打ち手の56%がAI以外でした。業務に合わせて手段を選んでいれば、提案の中にAI以外の案が自然に混ざります。逆に、すべての業務に同じツールや同じAIが並ぶ提案は、業務より先に売る物が決まっている合図です。ツールの販売代理を兼ねるコンサルが悪いわけではありません。ただ、その場合は「ツールの範囲で解ける課題か」を自社で先に判断する必要があります。

問い②:最初の契約に、すぐ終わるAI以外の案は何案あるか

集計では、難易度「低」の7案がすべてAI以外で、2〜4週間で試せる見込みでした。一方、RPAの試行は業務によって4〜8週間、画像AIや予測AIの試行は8〜12週間かかります。最初の契約に短く終わるAI以外の案が入っていれば、1か月ほどで「この会社と組んで業務が変わるか」を確かめられます。画像AIや予測AIの試行だけで始まる提案は、結果が見えるまで2〜3か月かかり、その間に判断の材料がありません。

最初の発注を短い案で切ることは、丸投げを防ぐ具体的な方法でもあります。製造業の経営者の方はnoteで、要件定義ごとベンダーに渡したことが「誰も使わないシステム」の原因だと指摘しています。試す段階の設計は生成AIのPoCの進め方も参考にしてください。

問い③:社員が自分で回せるまで何回で渡すか

当社は生成AIの使い方を「生成AI活用の2つの型」に分けてお伝えしています。①改善の進め方に使う(パソコン作業を録画してAIにムダを分析させ、詰まったら画面の写しを渡して次の手を聞く。明日から社員が自分でできる)と、②仕組みに組み込む(システムや業務そのものにAIを入れる。効果が残り続ける)です。②はコンサルや開発会社の手が要りますが、①は社員に渡せます。そこで聞くのは「①を何回の作業で渡し、渡し終えたことを何で判断するか」です。たとえば「担当者が自分で1業務を録画して分析し、改善案を1つ出せたら完了」のように答えられる会社は、支援が終わったあとの姿まで設計しています。②の提案だけで①に触れない会社は、支援が終わった日に改善も止まる危険があります。


費用はどう比べればいい?

見積もりは総額で比べず、「最初の段階の金額」「月額の決まり方」「追加になる条件」の3つに分けて比べます。相場は契約の形で大きく変わります。

人材サービス大手パソナの解説(2026年10月公開)では、DXコンサルの費用相場を次のように示しています。

契約の形 費用の目安
顧問契約(月額) 月10万〜300万円程度
プロジェクト型 数百万〜数千万円程度(人月単価は100万〜300万円程度)
時間契約(スポット) 1時間あたり数千円〜数十万円
成果報酬型 案件ごとに異なり、一律の相場はない

幅が広いのは、範囲と関わり方がまったく違うからです。総額だけを比べると、範囲の広い提案ほど高く見え、狭い提案ほど安く見えます。比べるときは次の3点をそろえます。

  • 最初の段階の金額:問い②で決めた最初の契約だけで、いくらかかるか
  • 月額の決まり方:人数・利用量・対象業務の数など、何が増えると月額が上がるか
  • 追加になる条件:どこまでが見積もりに入っていて、何をすると別料金になるか

料金体系の内訳は経営コンサルの費用相場と業務改善コンサルの費用相場で詳しく紹介しています。複数社の提案を同じ物差しで比べる評価表の作り方はシステムベンダーの選定方法をご覧ください。


よくある質問

Q. DXコンサルは中小企業でも頼む意味がありますか?
A. あります。ただし最初から全社構想を頼む必要はありません。DX推進指標で現在地を測り、部署をまたぐ業務の見える化と最初の打ち手選びだけを小さく頼むのが、費用対効果の高い使い方です。

Q. 大手のDXコンサルと中小のDXコンサルはどちらを選ぶべきですか?
A. 規模より課題の段階で選びます。全社の事業モデルを変えるなら大手ファーム、何から始めるか決まっていないなら業務改善型の会社が向いています。どちらの場合も「提案書を見極める3つの問い」で中身を確かめてください。

Q. DXコンサルとITベンダーは何が違いますか?
A. DXコンサルは何をどの順で変えるかを決める役、ITベンダーは決まったものを作る役です。両方を1社が担う場合は、提案にAIやシステムを使わない打ち手が入っているかで、手段に偏っていないかを確かめます。

Q. DXコンサルに依頼する前に準備しておくことは何ですか?
A. DX推進指標の自己診断の結果と、困っている業務を3つほど書き出しておくことです。業務ごとに「誰が・何回・何分かけているか」が分かれば、提案の質が大きく上がります。

Q. 生成AIを入れたいだけでもDXコンサルに相談すべきですか?
A. 相談する価値はあります。当社の集計では、生成AIの相談でも打ち手の半分以上がAI以外でした。AIが要る業務を絞ってから入れるほうが、費用もリスクも小さくなります。


まとめ

  • DXコンサルは出自で4種類に分かれる。良し悪しではなく、自社の課題の段階で向き不向きが決まる
  • 選ぶ前にDX推進指標で現在地を測る。平均は現在1.98・目標3.51(IPA、2026年5月公表)
  • 生成AIの相談で業務10件を評価した32案では、AIを使わない打ち手が18案(56%)、難易度「低」の7案はすべてAI以外だった
  • 提案を受けたら「提案書を見極める3つの問い」(AIを使わない案はどれか/最初の契約にすぐ終わるAI以外の案は何案あるか/社員が自分で回せるまで何回で渡すか)で見極める
  • 費用は総額でなく、最初の段階の金額・月額の決まり方・追加の条件に分けて比べる

業務改善からDXを進める全体像は業務改善コンサルティングで紹介しています。DXが途中で止まる原因はDX推進でつまずく課題と乗り越え方もあわせてご覧ください。

無料相談のご案内

「提案を受けたが、AIやツールに偏っていないか判断できない」「自社の業務のどこから手をつけるべきか整理したい」という場合は、無料相談をご利用ください。業務を1件ずつ見て、AIを使う案と使わない案を並べるところからご一緒します。


監修者

大槻 伸夫(キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO)
業務改善・BPR、生成AIの導入支援、PMIに携わる。コンタクトセンター・金融・自動車販売など複数業界で、業務改善と生成AI導入の提案・支援を担当。「現場主義×AI」を掲げ、AIの相談でもまず業務を1件ずつ見て、AIを使わずに済む打ち手から並べることを重視している。

参考資料

  • 経済産業省「『DX推進指標』を改訂しました」(2026年2月13日) https://www.meti.go.jp/press/2025/02/20260213001/20260213001.html
  • IPA「改訂した『DX推進指標』による自己診断結果の提出を2026年4月3日から受け付けます」 https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2025/press20260213.html
  • IPA「DX推進指標の自己診断結果1,164件を分析したレポートを公開」(2026年5月15日) https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2026/press20260515.html
  • パソナ ProShare「DXコンサルの費用相場は?」(2026年10月2日) https://pasona-proshare.com/column/it-dx/dx-consulting-fees
  • 小川正樹「ベンダー丸投げDXが失敗する本当の理由。内製と外注、経営者が引くべき1本の線」(note) https://note.com/musan634/n/n4be699dd4914
  • 実践DX研究室 by ADX「DX伴走支援が失敗する理由」(note) https://note.com/adx_lab/n/n5a28510e2816
  • キュリオシティ株式会社「本社業務 AI/DXアイデア集」(2026年6月作成、自動車販売会社・業務10件・打ち手32案。社名は非公開)


監修者

大槻 伸夫/ 代表取締役 CEO

キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO。「現場主義×AI」を掲げ、業務改善(BPR)・PMI・経営支援・AIプロダクト開発を一気通貫で支援。クライアント現場での実行支援を重視する。

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