2026.09.04

経営支援

経営者保証とは?解除の条件と経営者保証ガイドラインをわかりやすく

「会社の借入に、社長個人の連帯保証を付けている。これがある限り、思い切った投資も、子どもへの事業承継も踏み切れない」——中小企業の経営者から、資金や承継の相談を受けるとき、その裏側でほぼ必ず出てくるのが経営者保証の問題です。長く”当たり前”だったこの仕組みは、いま国の後押しで大きく見直しが進んでいます。

先に結論をお伝えします。経営者保証とは、会社(法人)が金融機関から借りたお金を、返せなくなったときに社長個人が肩代わりして返す約束(個人の連帯保証)のことです。そして、一定の条件を満たせば「保証を付けない融資」や「既存の保証の解除」を求められる時代になっています。判断の軸になるのが経営者保証に関するガイドラインで、鍵を握るのが後述する3要件(法人と個人の分離・財務基盤の強化・経営の透明性)です。

この記事では、経営者保証の意味とデメリット、ガイドラインの3要件、2022年の経営者保証改革プログラムで何が変わったか、事業承継や”もしも”のときの扱い、そして解除に向けた進め方までを、”現場主義 × AI”で中小企業の経営支援・資金繰り改善を支援してきた立場から、わかりやすく解説します。


経営者保証とは?わかりやすく言うと何か

経営者保証とは、会社が金融機関から受けた融資について、経営者個人が連帯保証人となり、会社が返済できなくなった場合に個人の財産で返済する義務を負う仕組みです。「社長の個人保証」「代表者保証」とも呼ばれます。

会社(法人)と経営者(個人)は法律上は別人格ですが、経営者保証を付けると、会社の借金が実質的に社長個人の借金と一体になります。会社が倒産して返済不能になれば、金融機関は保証人である社長個人に返済を求め、社長は自宅や預貯金といった個人資産で返さなければなりません。日本の中小企業では、この経営者保証を条件に融資を受けるのが長く一般的な慣行でした。

金融機関側から見れば、経営者に「自分ごと」として経営規律を持たせ、貸し倒れリスクを担保する意味があります。一方で、後述するように、これが事業の成長や世代交代の足かせになってきたことも事実です。

経営者保証があると何が問題なのか?

経営者保証の最大の問題は、会社のリスクと経営者個人の人生が過度に一体化してしまうことです。具体的には、次の3つの弊害が繰り返し指摘されてきました。

  • 思い切った挑戦ができない:失敗すれば個人破産という重圧から、設備投資や新規事業への踏み込みをためらう。
  • 事業承継が進まない:後継者候補が「多額の個人保証まで引き継ぐのは怖い」と承継をためらい、廃業の一因になる。
  • 再チャレンジが難しい:一度事業に失敗すると個人まで再起不能になり、経験ある経営者が退場してしまう。

とくに深刻なのが事業承継への影響です。親族や従業員に会社を継いでほしくても、「借入の連帯保証まで背負わせるのか」という点が最後の壁になり、承継の話が止まってしまうケースは少なくありません。承継全体の進め方は事業承継としてのM&Aの進め方や後継者の選び方と育て方でも解説していますが、その入口で経営者保証がボトルネックになっている——これが現場の実感です。

現場での実感(匿名事例):地方の従業員数十名の製造業では、後継者である息子が「保証を引き継ぐくらいなら会社は継がない」と態度を硬化させ、承継が数年間止まっていました。財務内容自体は悪くなかったため、後述の3要件を整理して金融機関と交渉した結果、承継のタイミングで経営者保証を外す方向に動き、ようやく承継の話が前に進みました。支援現場の実感として、3要件を整えて解除の合意にこぎ着けるまでには、財務や経営体質の改善に1〜3年ほどの地道な取り組みが必要です(要件が整えば、合意そのものは数か月で進むこともあります)。保証は「外せない前提」ではなく「交渉できる条件」だと知ることが、最初の一歩でした。

経営者保証に関するガイドラインとは?

経営者保証に関するガイドラインとは、経営者保証の弊害を解消するために定められた、金融機関と中小企業が守るべき自主的なルールです。日本商工会議所と全国銀行協会を事務局とする研究会が策定し、2013年12月に公表、2014年2月から適用が始まりました(出典:中小企業庁)。

法律のような強制力はありませんが、金融機関にとっては事実上の共通ルールとして定着しています。ガイドラインが示す方向性は、大きく次の2つです。

  1. 融資を受ける段階:一定の条件(3要件)を満たす会社には、経営者保証を求めない、あるいは既存の保証を解除する対応を金融機関に促す。
  2. 返済できなくなった段階:保証債務を整理する際に、経営者に一定の生活資金や自宅を残し、破産よりも柔軟に、経営者が再起しやすい形で処理できるようにする。

つまりガイドラインは、「入口(保証を付けない)」と「出口(万一のときも人生を守る)」の両面から、経営者保証への過度な依存をなくすための土台になっています。キュリオシティでは、この二面を「入口・出口の二面モデル」として整理し、平時は入口(3要件を整えて保証を外す)、有事は出口(保証債務整理で人生を守る)のどちらの局面かを見極めて支援しています(出典:支援現場の知見)。

経営者保証を外す3要件とは?

経営者保証を求められない(または解除してもらう)ために、ガイドラインが会社に求めているのが次の3要件です。この3つを満たすほど、「保証がなくても信用できる会社」と評価され、交渉が有利になります。キュリオシティでは、自社がいまどこまで整っているかを点検する「3要件セルフチェック(法人・個人の分離/財務基盤/情報開示)」を支援の起点にしています(出典:支援現場の知見)。

# 要件 求められる状態(目安)
① 法人と個人の資産・経理の分離 会社の資産・お金と経営者個人の資産・お金が明確に分かれている。社長個人への不透明な貸付や、事業に必要な資産の個人所有がない
② 財務基盤の強化 財務が健全で返済力がある。直近決算で債務超過でなく、本業の利益(減価償却前経常利益)が継続して黒字であることなどが目安
③ 経営の透明性確保(情報開示) 金融機関へ、財務状況や業績見通しを適時・適切に、正確に開示している

要点は、「会社と個人がきちんと切り分けられ、返済力があり、包み隠さず情報を出している会社なら、社長個人の保証に頼る必要はない」という考え方です。逆に言えば、社長個人と会社のお金が混ざっている・赤字が続いている・決算書以外の情報を出していない、という状態だと、保証を外す交渉は難しくなります。

3要件は一朝一夕には整いません。①は役員報酬や貸付金の整理、②は収益改善と自己資本の積み増し、③は月次試算表の開示や事業計画の共有といった、日々の経営管理そのものです。財務面の現状把握は財務分析の手法、収益力の立て直しは経営改善計画書の書き方、資金繰りの安定化は資金繰りを改善する方法が土台になります。

経営者保証改革プログラムで何が変わった?

近年、経営者保証を外す動きは制度面から大きく加速しました。転機になったのが、2022年12月に経済産業省・金融庁・財務省が連携して公表した経営者保証改革プログラムです(出典:中小企業庁)。このプログラムは、①スタートアップ・創業、②民間金融機関による融資、③信用保証付融資、④中小企業のガバナンス、の4分野で構成されています。実務に効いている代表的な変化が次の2つです。

2023年4月〜:金融機関に「保証を求める理由」の説明義務

2023年4月から、民間金融機関が経営者保証を求める場合、「どの部分が要件を満たさないから保証が必要なのか」「どうすれば保証の解除・非徴求が可能になるか」を、経営者に個別・具体的に説明し、その記録を残すことが求められるようになりました。金融庁の監督指針にもとづく運用で、「とりあえず保証を付ける」という安易な対応にブレーキがかかりました。経営者の側から「なぜ保証が必要なのか、外すには何が足りないのか」を尋ねる正当な根拠ができた、という意味で大きな前進です。

2024年3月〜:保証料の上乗せで保証を外せる選択肢

信用保証付融資でも見直しが進み、2024年3月からは、3要件のすべてを満たしていなくても、保証料率を一定上乗せすることで経営者保証を提供しないことを選べる制度が始まりました(出典:中小企業庁)。要件が完全には整っていない会社にも、「上乗せコストを払ってでも保証を外す」という現実的な選択肢が広がっています。

これらの結果、新規融資に占める「経営者保証に依存しない融資」の割合は年々高まっており、経営者保証は”必ず付くもの”から”付けないことも選べるもの”へと、実務の常識が変わりつつあります。

事業承継のときの経営者保証はどうなる?

事業承継の場面は、経営者保証がとくに問題になりやすいポイントです。ここでも見直しが進んでいます。

かつては、事業承継の際に前の経営者(先代)と後継者の両方から二重に保証を取るケースがありました。これでは後継者の負担が重く、承継の妨げになります。そこで、原則として前経営者・後継者の双方から二重には保証を求めない取り扱いが促され、承継時に保証のあり方を見直すことが求められています。あわせて、信用保証協会には、一定の要件を満たせば承継時に経営者保証を不要にできる専用の保証制度も整備されています。

事業承継は、株式や資産の移転だけでなく、この保証をどう引き継ぐ(あるいは外す)かまで設計して初めて完了します。承継後に何から着手すべきかは事業承継後の経営で最初にやること、第三者への承継という選択肢は会社売却(事業承継M&A)の進め方で解説しています。承継を検討し始めた段階から、金融機関に「承継を機に保証を見直したい」と早めに相談しておくことが、後継者の不安を減らす近道です。

会社が返せなくなったら経営者保証はどうなる?

「もし会社が立ち行かなくなったら、保証人の社長は全財産を失うのか」——ここもガイドラインが守ってくれる領域です。経営者保証に関するガイドラインにもとづいて保証債務を整理すれば、通常の自己破産よりも経営者に有利な形で処理できる可能性があります。

具体的には、ガイドラインに沿った手続きでは、次のような配慮がなされます。

  • 一定の生活費や資産を手元に残せる:破産のように一律で財産を失うのではなく、当面の生活費や、いわゆる”華美でない自宅”などを残せる場合がある。
  • 信用情報に傷がつきにくい:ガイドラインに基づく整理では、いわゆるブラックリスト(信用情報機関への事故情報)に登録されない扱いとなり、再チャレンジの妨げになりにくい。
  • 早期の相談・誠実な対応が前提:資金が尽きる前に金融機関へ相談し、情報を正直に開示していることが、柔軟な整理の条件になる。

つまりガイドラインは、「入口で保証を外す」だけでなく、「万一のときも経営者の人生を守り、次の挑戦につなげる」ためのセーフティネットにもなっています。ただし、これらは早く動くほど選択肢が広がる領域です。資金繰りが厳しくなってきたら、手遅れになる前に相談することが何より重要です。

経営者保証を解除するには何から始める?

経営者保証の解除は、次の順序で進めるのが現実的です。「交渉」の前に「自社の状態を3要件で整える」ことが先決です。

  1. 現状を3要件で棚卸しする:法人・個人の分離、財務基盤、情報開示の3つが、いまどの程度できているかを点検する。
  2. 弱点を計画的に埋める:社長貸付の解消、収益改善による黒字化・自己資本の積み増し、月次での試算表・事業計画の開示など、足りない点を1〜3年計画で改善する。
  3. 金融機関に説明を求め、交渉する:2023年4月以降の説明義務を踏まえ、「保証を外すには何が必要か」を具体的に確認し、要件が整ったタイミングで解除を申し入れる。
  4. 借換え・新規融資のタイミングを活用する:借換えや新規融資、事業承継といった節目は、保証のあり方を見直す好機になる。

経営者保証は「金融機関に言われるまま付けるもの」ではなく、自社の経営体質を整えれば主体的に外していけるものです。資金調達の全体像を押さえたうえで交渉に臨みたい場合は中小企業の資金調達の方法もあわせてご覧ください。

キュリオシティでは、”現場主義 × AI”の立場から、3要件の棚卸し、法人・個人の分離や財務基盤強化に向けた経営改善、金融機関に納得される情報開示・事業計画づくりまでを一貫して伴走支援しています。支援全体の考え方は経営支援コンサルティングにまとめています。「保証を外したいが、何から手をつければいいか分からない」という段階でも、早いほど打てる手は多くなります。まずは無料相談で、自社の現状と、解除に向けた道筋の整理からご一緒します。

よくある質問(FAQ)

Q. 経営者保証とは何ですか?わかりやすく教えてください。
A. 会社が金融機関から借りたお金を、返せなくなったときに社長個人が肩代わりして返す約束(個人の連帯保証)のことです。会社と経営者は本来別人格ですが、経営者保証を付けると会社の借金が実質的に社長個人の借金と一体になります。

Q. 経営者保証は外せますか?
A. 外せます。経営者保証に関するガイドラインの3要件(法人と個人の分離・財務基盤の強化・経営の透明性)を満たすほど、保証を求めない融資や既存保証の解除を金融機関に求めやすくなります。2023年4月以降は、金融機関に「保証を外すには何が必要か」を説明する義務があります。

Q. 経営者保証を外す3要件とは何ですか?
A. ①法人と個人の資産・経理が明確に分離されていること、②財務基盤が強く返済力があること(債務超過でない・継続黒字など)、③金融機関へ財務・業績情報を適時適切に開示していること、の3つです。

Q. 事業承継のとき、経営者保証はどうなりますか?
A. 原則として先代と後継者の双方から二重に保証を取らない取り扱いが促されており、承継を機に保証を見直せます。信用保証協会には、要件を満たせば承継時に経営者保証を不要にできる専用制度もあります。承継を検討し始めた段階で金融機関に相談するのが有効です。

Q. 経営者保証を外すと、金利や審査で不利になりますか?
A. 民間金融機関のプロパー融資では、無保証だからといって一律に金利が上がるわけではなく、会社の財務内容次第です。一方、信用保証付融資で3要件を完全に満たさないまま保証を外す場合は、2024年3月に始まった制度により保証料率が一定上乗せされます。審査面では、保証に頼らない分、財務の健全性と情報開示がより重視されます。

Q. 会社が倒産したら、保証人の社長は全財産を失いますか?
A. 経営者保証に関するガイドラインに沿って整理すれば、通常の自己破産より有利になる場合があります。一定の生活費や華美でない自宅を残せることがあり、いわゆるブラックリストにも登録されない扱いです。早く相談するほど選択肢が広がります。


監修:大槻 伸夫(キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO)
“現場主義 × AI”を掲げ、中小企業の経営支援・資金繰り改善・事業承継の局面で、経営者保証の解除に向けた3要件の整備から金融機関との交渉までを伴走支援する。本記事は公的機関の情報(中小企業庁)と、匿名化した支援現場の知見にもとづいて構成しています。制度の詳細・個別の適用可否は、金融機関や専門家にご確認ください。


監修者

大槻 伸夫/ 代表取締役 CEO

キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO。「現場主義×AI」を掲げ、業務改善(BPR)・PMI・経営支援・AIプロダクト開発を一気通貫で支援。クライアント現場での実行支援を重視する。

業務改善・PMIのご相談はキュリオシティへ

記事で紹介したテンプレートの配布や、貴社課題に合わせた無料相談を行っています。

BACK TO INDEX