※本記事は、ロジカルシンキングの定番書と、当社の社内研修「ロジックツリー100日トレーニング」(問題集100題・模範回答105ツリー)を当社が集計した結果にもとづきます(2026年10月時点)。
ロジックツリーは、問いを1文に決め、型を選び、第1階層を式か観点で割り、行動できる粒度まで下ろす順で作ります。
「分けてはみたが、枝が多すぎて何も決まらない」「原因は並んだのに、打ち手につながらない」。ロジックツリーでつまずくのは、たいてい最初の1段目の切り口と、原因から打ち手へ移るところです。この記事では、1つの題材で5ステップを最後まで通し、当社研修の模範回答105本を数えて分かった「第1階層の目安」も紹介します。
ロジックツリーとは?何のために作る?
ロジックツリーは、1つの問いを「漏れなく・ダブりなく(MECE)」枝分かれさせて、全体像を一目で見える形にする図です。目的に応じてWhat・Why・Howの3つの型を使い分けます。
MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)は、日本では照屋華子・岡田恵子『ロジカル・シンキング』(東洋経済新報社、2001年)で広く知られた考え方です。ロジックツリーを作ると、次のような効果があります。
- 問題の全体像を関係者で同じ絵として共有できる
- 思いついた原因だけに飛びつかず、見落としを防げる
- 枝ごとに効き目と動かしやすさを比べ、打ち手の優先順位を付けられる
| 型 | 頂点に置く問い | 使う場面 |
|---|---|---|
| What(要素分解) | 何でできているか | 全体像や数字の内訳をつかむ |
| Why(原因追求) | なぜ起きたか | 原因の候補を広げて絞る |
| How(問題解決) | どうすればよいか | 打ち手を漏れなく出す |
当社の研修問題集も、3つの型を同じくらい練習するよう作っています(100題のうちWhat 31題・Why 29題・How 31題、型をつなぐ問題9題)。
イシューツリー・なぜなぜ分析・KPIツリーとはどう違う?
ロジックツリーは「分ける図」の総称です。イシューツリーは答えを出すべき問いを、なぜなぜ分析は1つの原因を縦に、KPIツリーは目標の数字を分けるもので、いずれも仲間にあたります。
| 名前 | 分けるもの | 向いている場面 |
|---|---|---|
| イシューツリー(論点ツリー) | 答えを出すべき問い | 調査や提案で確かめることを決める |
| なぜなぜ分析 | 1つの原因を縦に深掘り | 再発防止で真因を1本に絞る |
| KPIツリー | 目標の数字(KGI→KPI) | 目標を現場の指標に落とす |
イシュー(いま答えを出すべき問い)という考え方は、安宅和人『イシューからはじめよ』(英治出版、2010年)で広まりました。
ロジックツリーはどう作る?1つの題材で通す5ステップ
①問いを1文にする→②型を選ぶ→③第1階層を「式先・観点後ルール」で割る→④動ける粒度まで下ろす→⑤点検して打ち手を付ける枝を選ぶ、の順です。ここでは「Webサイトからの問い合わせ減少」を題材に通します。
ステップ1:頂点の問いを「数字の入った1文」にする
「問い合わせを増やしたい」では枝が無限に広がります。対象・数字・期間を入れて1文にします。
- 例:「Webサイトからの問い合わせが前月比30%減ったのはなぜか」
- 確認:問いが1文で、数字と期間が入っているか
ステップ2:What・Why・Howのどれで割るかを決める
原因を知りたいならWhy、打ち手を出したいならHowです。1枚に原因と打ち手を混ぜると、事実と案の区別がつかなくなります。
- 例:まずWhyツリーで原因を割り、効く枝が分かってからHowツリーを別に描く
ステップ3:第1階層を「式先・観点後ルール」で割る
当社の研修では、第1階層を次の順で考えるよう教えています。本記事ではこれを「式先・観点後ルール」と呼びます。
- まず式で割れないか試す:掛け算か足し算で元の数字に戻る分け方(電気代=使用量×単価 など)なら、漏れもダブりも起きません
- 式で割れない部分は観点で割る:下の表の切り口から選び、4〜5本を目安にします
- 数字の変化を問うWhyでは、社外の要因と「本当に変わったのか(計測)」も枝の候補にする
| 観点の切り口 | 例 |
|---|---|
| プロセス・時間の順 | 認知→比較→問い合わせ/計画→実行→振り返り |
| 関わる人 | 自社・顧客・取引先 |
| 社内と社外 | 自社で動かせる要因/市場・競合・季節 |
| 3C・4P などの枠組み | 顧客・競合・自社(3C分析のやり方) |
- 例:「問い合わせ数=流入数×転換率」の式で2本、観点で「社外の環境変化」「計測上の問題」の2本を足して4本
式の2本は「どこで減ったか」、社外と計測の2本は「本当に減ったのか・社外のせいか」を確かめる枝です。厳密には社外の要因は流入数や転換率を通して効きますが、先に確かめたいので頂点のすぐ下に出しています。このように軸の違う枝を同じ段に置くときは、置く理由を書き添えます。
ステップ4:末端を「誰かが明日動ける粒度」まで下ろす
頂点を含めて3階層を基本に、末端が担当者の動ける言葉になったら止めます。研修の模範回答も105本中96本が頂点+2段で、末端の数は中央値16個でした。
- 例:「転換率の低下」→「フォームが見つけにくい」「送信エラー」「料金ページが古い」
ステップ5:点検してから、打ち手を付ける枝を選ぶ
当社研修では毎回、次の「セルフチェック25点表」で自己採点し、段階ごとの合格点(基礎15点→応用18点→実践20点→総仕上げ22点)を超えるまで直します。
| 項目(各5点) | 確かめること |
|---|---|
| MECE | 同じ段の枝に漏れやダブりはないか |
| 階層の深さ | 頂点を含めて3階層以上あるか |
| 粒度の統一 | 同じ段の抽象度は揃っているか(「人の問題」と「新人の入力ミス」が並んでいないか) |
| 具体性 | 末端は行動か、確かめられる事実になっているか |
| 実用性 | このツリーで実際に判断や打ち手の選択ができるか |
点検後、データで枝を絞り、残った枝にだけ打ち手を付けます(次の記入例)。
第1階層の枝は何本がよい?研修の模範回答105本を数えて分かったこと
当社研修の模範回答105本では、第1階層が4本のツリーが65本、5本が28本で、合わせて約9割でした。2〜3本で済んだのは、主に式で割れたテーマです。

一般には「第1階層は2〜4本が目安」と説明されることもあります。当社の問題集100題(複数の木を描く問題があるため計105本)の模範回答を数えた結果は次のとおりです。
| 数えたこと | 結果 | 作り方への示唆 |
|---|---|---|
| 第1階層の枝の数 | 4本65本・5本28本(計89%)、2〜3本8本、6本以上4本 | 観点で割るなら4〜5本が目安 |
| 第1階層を式だけで割ったツリー | 105本中6本(約6%) | 式で割れるテーマは少ない。だから先に試す |
| 2〜3本のツリーの中身 | 8本中4本が式(使用量×単価、固定費+変動費など) | 2〜3本で済むのは式で割れた時 |
| Whyツリーで社外(市場・競合・業界など)の枝を持つもの | 29題中12題(41%) | 社内の原因だけで閉じていないか確かめる |
| 「その他」の枝を含むもの | 105本中3本 | 「その他」で逃げず、名前の付く枝にする |
※模範回答は当社が作った見本です。この分布は見本の作り方の傾向で、受講者の成果との関係を測ったものではありません。
ここから言えるのは、枝の本数は目標ではなく結果だということです。式で割れれば2〜3本で完結し、観点で割ると4〜5本に落ち着きます。観点で割ったのに3本しか出ないときは漏れを、6本を超えたら粒度の混在を疑ってください。
記入例:原因の木から打ち手の木へ、どうつなぐ?
原因の枝は漏れなく並べ、打ち手は「効いて、自社で動かせる」枝にだけ付けます。全部の枝に打ち手を付けると、施策が散らばって何も進みません。

研修のDay27「Webサイトへの問い合わせ数が前月比30%減少した」の模範回答をもとに、図の①〜④の順で使います。
- ①計測の問題を最初に確かめる:計測タグが壊れていた、電話やチャットに流れただけ、なら分析そのものが要りません
- データで②と③を見分ける:流入数が横ばいで転換率だけ落ちていれば、原因は③転換率の枝にあります
- ④社外の枝は動かせるかで分ける:季節の波や景気は前提として扱い、打ち手は付けません。競合のキャンペーンのように対抗できるものは打ち手の候補に残します
- ③にだけHowツリーを付ける:フォームの位置を戻す、入力項目を減らす、料金ページを最新にする、と末端を動ける言葉にします
業務改善や中期経営計画では、ロジックツリーをどう使う?
業務改善では「横に広げる道具」として、中期経営計画では「目標の数字を部門の行動まで下ろす道具」として使います。
業務改善では、まずWhyツリーで原因の候補を横に広げ、データで残った1〜2本の枝だけを縦に深掘りします。広げる道具と掘る道具を分けると、思い込みの1本だけを掘り続ける失敗を防げます。縦の掘り方は「なぜなぜ分析のやり方」、業務の洗い出し方は「業務の現状分析(As-Is)のやり方」で解説しています。
中期経営計画では、売上や利益の目標をWhatツリーで分け、各枝に部門の目標と行動をひも付けます。指標の選び方は「KPIの設定方法」、計画全体は「中期経営計画の策定手順」をご覧ください。
どう練習すれば身につく?100日トレーニングの組み立て
1日1題・15〜20分で、身近なテーマから自社の課題へ段階的に難しくするのが近道です。
| 段階 | 期間 | テーマ | 例 |
|---|---|---|---|
| 基礎 | Day1〜25 | 身近な題材で3つの型を覚える | コンビニの売上 |
| 応用 | Day26〜60 | 売上・組織・業務などのビジネス題材 | 問い合わせ30%減 |
| 実践 | Day61〜85 | WhyからHowへつなぐ複合問題・業界題材 | 老舗旅館の客数40%減 |
| 総仕上げ | Day86〜100 | 自分の業務・自社の課題 | 自社の最大の経営課題 |
身近な題材から始めるのは、業界知識でつまずかず、分け方の型だけに集中できるからです。最後に自分の業務を題材にすると、練習がそのまま実務の課題整理になります。
よくある質問(FAQ)
Q. ロジックツリーは何階層まで作ればよいですか?
A. 頂点の問いを含めて3階層が基本です。末端が「誰が・何をするか」の分かる言葉になったら止めます。当社研修の模範回答も105本中96本が頂点+2段でした。
Q. 第1階層の枝は何本にすればよいですか?
A. 式で割れるテーマなら2〜3本、観点で割るなら4〜5本が目安です。当社研修の模範回答105本では、4〜5本のツリーが約9割でした。
Q. ロジックツリーとイシューツリーの違いは何ですか?
A. ロジックツリーは要素・原因・打ち手を分ける図の総称で、イシューツリーはその中でも答えを出すべき問いを分けるものです。実務ではほぼ同じ意味で使われることもあります。
Q. MECEになっているかはどう確かめればよいですか?
A. 同じ段の枝に重なりや抜けがないかを確かめます。式で割れる部分は式にし、Whyツリーでは社内の原因だけで閉じていないかを点検すると漏れが減ります。当社研修では、MECE・階層の深さ・粒度・具体性・実用性の5項目を各5点で自己採点しています。
Q. ロジックツリーはExcelやPowerPointで作れますか?
A. 作れます。最初は紙や付せんで枝を出し、形が固まってからExcelの表やPowerPointの図に清書すると、直す手間が少なくなります。
まとめ:第1階層は式から試し、本数で漏れと粒度を点検する
- 第1階層は式で割れないか先に試す。観点で割って3本なら漏れを、6本を超えたら粒度の混在を疑う
- 原因の枝は漏れなく並べ、打ち手は効いて自社で動かせる枝にだけ付ける
- 問いは数字の入った1文にし、原因(Why)と打ち手(How)は別の木に描く
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課題整理・計画づくりのご相談
キュリオシティは「現場主義 × AI」で、課題の構造化から中期経営計画への落とし込み、現場での実行までを伴走します。支援内容は「中期経営計画・経営支援コンサルティング」をご覧ください。
監修:大槻 伸夫(キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO)。全社戦略・事業承継・M&A後の統合(PMI)と業務改善の支援に携わり、社内ではロジックツリー研修を含む人材育成を推進。「現場主義 × AI」で戦略を現場の実行まで落とし込む伴走を行う。
