「PMIの100日プランを作れと言われたが、何を、どの列で書けばいいのか」——そこで手が止まる方に向けた記事です。
結論から言えば、PMI 100日プランのテンプレートは、①4領域×4フェーズの「一覧表」と、②担当・期日・完了基準を持つ「タスク行」という二層があれば足ります。逆に、この二層のどちらかが欠けると、計画は「作ったけど動かない一枚」になります。
この記事では、100日プランの理屈や作り方の手順は既存の解説記事に譲り、そのままコピーして使えるテンプレートの型と、複数の記入例に振り切ってお渡しします。読み終えた瞬間に、自社の1枚を埋め始められる状態がゴールです。
100日プランの「定義・必要性・4領域×30日での作り方」を先に押さえたい方は、PMI 100日プランとは?テンプレと4領域×30日の作成手順を先にご覧ください。本記事はその続き=「テンプレ本体と埋め方」です。
1. 結論:PMI100日プランのテンプレートは「一覧表+タスク行」の二層でいい
100日プランのテンプレートは、凝る必要はありません。必要なのは次の二層だけです。
- 上段:マイルストーン一覧表(縦=統合の4領域 × 横=4フェーズ)。100日全体を1枚で俯瞰し、「いつ・どの領域で・何を達成するか」を示す。
- 下段:タスク行(1行=1タスク)。上段のマイルストーンを、担当・期日・完了基準まで割り付けた実行リスト。
なぜ二層に分けるのか。上段だけだと「絵に描いた餅」になり、下段だけだと「木を見て森を見ず」になるからです。経営陣・売り手(前経営者)・現場が同じ絵を見るのが上段、週次で潰していくのが下段。役割が違うので、同じシートの中で層を分けます。
この二層を、まず何もない状態から埋めていくためのテンプレートを、次章で型としてお見せします。全体像は次の図のイメージです。

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本記事の「一覧表+タスク行」の型を、そのまま編集できる形式でご用意しました。以下のフォームから無料でダウンロードいただけます。
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2. そのまま使えるテンプレートの型(項目定義)
2-1. 上段:4領域×4フェーズのマイルストーン一覧表
縦軸に統合の4領域、横軸に100日を4つに割ったフェーズを取り、各マスに「そのフェーズで達成する状態」を1行で書きます。空のテンプレートは次の形です。
| 領域\フェーズ | Pre-PMI(成立前〜Day0) | Day1–30(着任・信頼構築) | Day31–60(現状把握) | Day61–100(優先順位づけ・橋渡し) |
|---|---|---|---|---|
| 経営・組織 | ||||
| 人事・労務 | ||||
| 業務・現場 | ||||
| 財務・IT |
- 領域は4つが基本(経営・組織/人事・労務/業務・現場/財務・IT)。事業内容に応じて「営業・顧客」「拠点・設備」等を足しても構いませんが、増やしすぎると俯瞰性が落ちます。5〜6行が上限の目安です。
- 横軸は「Pre-PMI+30日刻み×3」。Pre-PMI列を必ず設けるのがコツです。成立前にやるべき(体制決め・キーパーソン特定)を後ろ倒しにすると、Day1で必ず詰まります。
2-2. 下段:タスク行テンプレート(列定義)
一覧表の各マスを、実行できる粒度まで割り付けたのがタスク行です。列は次の10列を推奨します。
| 列 | 意味 | 記入のポイント |
|---|---|---|
| No | 通し番号 | 並べ替え・参照用 |
| 領域 | 上段の4領域のどれか | 一覧表と対応させる |
| フェーズ | Pre/1–30/31–60/61–100 | いつやるか |
| タスク | やること | 動詞で1タスク(「〜する」で終える) |
| 担当 | 主担当1名 | 複数名にしない。責任者を1人 |
| 期日 | 完了目標日 | 「◯月末」でなく日付 |
| 完了基準(DoD) | 何をもって完了か | これが肝。次項で詳述 |
| 優先度 | 高/中/低 | 迷ったら「高」を絞る |
| 状態 | 未着手/進行中/完了/保留 | 週次で更新 |
| メモ | 論点・依存関係 | 「◯◯待ち」等 |
2-3. 迷ったら「最小4列」だけでいい
「10列は多い」と感じたら、まずは次の4列だけで始めてください。
タスク|担当|期日|完了基準
私たちがPMIの現場を支援していて痛感するのは、この4つが1行で揃っていることが、機能する100日プランの最小単位だということです。逆に、この4つが欠けたタスクは、そのほとんどが100日の間、一度も動きません(次章以降の記入例と第6章で具体的に触れます)。
2-4. コピーして貼るだけの枠(テキスト版)
編集ファイルのDLを待たずに、まず着手したい方向けに、そのままスプレッドシートに貼れるテキストの枠を置いておきます。以下をコピーして、上段(一覧表)と下段(タスク行)の見出し行として貼り付けてください。
【上段:マイルストーン一覧表】
領域\フェーズ Pre-PMI Day1–30 Day31–60 Day61–100
経営・組織
人事・労務
業務・現場
財務・IT
【下段:タスク行】
No 領域 フェーズ タスク 担当 期日 完了基準(DoD) 優先度 状態 メモ
(区切りはタブです。Excel/Googleスプレッドシートに貼ると自動で列に分かれます。まずは下段の「タスク・担当・期日・完了基準」の4列から埋めれば動き出します。)
3. 記入例①|製造業・事業承継型M&A(匿名)
ここからは実際の記入例です。守秘のため、業界・規模・打ち手だけを残して匿名化しています(実名・実数は出していません)。
ケース:製造業・従業員数十名規模。後継者不在の事業承継型M&A。 前経営者が退任予定で、現場の不安が大きいのが初期の論点でした。
上段(マイルストーン一覧表・記入例)
| 領域\フェーズ | Pre-PMI | Day1–30 | Day31–60 | Day61–100 |
|---|---|---|---|---|
| 経営・組織 | PMI推進体制・会議体を決定 | 新経営方針を全社へ提示 | 主要KPIを合意 | 中期計画の骨子を策定 |
| 人事・労務 | キーパーソン3名を特定 | 個別面談で不安を把握 | 就業規則・未払残業を点検 | 評価・処遇の方針を提示 |
| 業務・現場 | 主要工程を一覧化 | 現場に毎日入り実態把握 | 業務フローを文書化 | 改善テーマを3件に絞る |
| 財務・IT | 月次の締め状況を確認 | 資金繰り実績を把握 | 会計・原価の見える化 | 基幹システム方針を決定 |
下段(タスク行・記入例)
| No | 領域 | フェーズ | タスク | 担当 | 期日 | 完了基準(DoD) | 優先度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 経営 | Pre | 推進体制と週次会議体を決める | 新社長 | 成立前日 | 体制図と会議日程が確定・共有済み | 高 |
| 2 | 人事 | 1–30 | キーパーソン3名と個別面談する | 新社長 | Day20 | 3名分の面談メモと離職リスク評価が完了 | 高 |
| 3 | 業務 | 31–60 | 主要3工程の業務フローを書く | 現場責任者 | Day55 | フロー図3本がレビュー承認済み | 高 |
| 4 | 財務 | 31–60 | 月次決算を翌月10営業日で締める | 経理担当 | Day60 | 2か月連続で10営業日以内に締め完了 | 中 |
このケースで効いたのは、No.1のように「体制決め」をPre-PMI列に置いたことでした。着任してから体制を考えると、Day1–30の面談も現状把握も後ろ倒しになります。
4. 記入例②|サービス業・同業の小規模買収(匿名)
ケース:サービス業・小規模の同業買収。 業務知識が前経営者に集中している(属人化)のが最大のリスクでした。そこで100日プランを「引き継ぎ」を軸に組みました。上段の一覧表は記入例①と同じ形なので割愛し、ここでは特徴が出る下段(タスク行)だけを抜粋します。
| No | 領域 | フェーズ | タスク | 担当 | 期日 | 完了基準(DoD) | 優先度 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 業務 | Pre | 前経営者の退任日と引き継ぎ期間を固定する | 新経営者 | 成立時 | 3か月の引き継ぎ期間が契約・合意済み | 高 |
| 2 | 業務 | 1–30 | 前経営者に業務ヒアリングを行う | 承継担当 | Day30 | 主要業務10項目のヒアリングメモが完成 | 高 |
| 3 | 業務 | 31–60 | 属人業務を手順書化する | 承継担当 | Day60 | 手順書5本が現場で再現テスト済み | 高 |
このケースの肝は、No.1で「引き継ぎ期間そのもの」を最初のタスクにしたことです。属人化案件では、前経営者が抜ける前の時間が最も希少な資源であり、退任日と引き継ぎ期間を成立時に固定できるかどうかで、Day31以降の手順書化が回るか決まります。あわせて、現場の不安を早く下げる小さな成果(クイックヒット)を別枠で置いたのですが、その書き方は次章で扱います。
こうした「属人化の解きほぐし」は100日プランの核心の一つです。進め方の型は業務の属人化を解消する進め方と仕組み化のコツ、業務の書き出し方は業務棚卸しの手順|抜け漏れない洗い出し方もあわせてご覧ください。
5. 記入例③|30日で出す「クイックヒット」の書き方
100日プランには、早期に小さな成果(クイックヒット)を出すタスクを必ず1〜2本入れます。統合の初期は現場が「何が変わるのか」と身構えるため、目に見える改善を早く出すと信頼が得やすいからです。
中小企業庁も、職場環境の改善や情報共有の仕組みづくりなどを早期の取り組み例として挙げています(中小企業庁「PMI実践ツール 活用ガイドブック」令和6年3月)。テンプレートに落とすと次のようになります。
| No | 領域 | フェーズ | タスク(クイックヒット) | 担当 | 期日 | 完了基準(DoD) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 業務 | 1–30 | 手作業の帳簿をExcel化する | 事務担当 | Day25 | 月次集計が手作業ゼロで出せる |
| 2 | 人事 | 1–30 | 休憩室・老朽設備を1点だけ直す | 総務担当 | Day20 | 現場が使える状態に改修完了 |
| 3 | 経営 | 1–30 | 月次業績を全社に開示する | 新経営者 | Day15 | 全社共有が1回実施済み |
クイックヒットのコツは、「安く・早く・目に見える」ものを選び、欲張らないこと。第6章の「盛りすぎ」とも関係します。なお、事務・間接業務側の小さな効率化のネタは間接業務の効率化アイデアと優先順位の付け方が参考になります。
6. 記入のコツとNG例(現場の所感)
テンプレートは「型」があっても、埋め方を誤ると動きません。支援の現場でよく見るNGと対策を挙げます。
NG①:担当と期日が空欄のまま。
最も多く、最も致命的です。これまで私たちが支援・観察してきた十数件規模の事業承継PMIでも、100日プランの初稿では体感でタスクのおよそ3〜4割が、担当か期日のどちらかが空欄でした。ある製造業の事業承継案件でも初稿のタスクの半数近くが担当・期日ともに空欄で、その空欄タスクは100日の間、ほぼ1つも動きませんでした。担当と期日が入ったタスクだけが週次のレビューで進捗する——これは案件をまたいでほぼ例外がありません。誰の・いつまでの仕事か決まっていないタスクは、存在しないのと同じです。担当は必ず1名に絞ります。
NG②:完了基準(DoD)が曖昧。
「業務フローを整理する」では、どこまでやれば終わりか分かりません。同じ案件で「フロー図3本がレビュー承認済み」と完了基準を1行で足した途端、週次で潰れ始めました。DoDは「何が・どうなっていたら完了か」を、検証可能な形で書きます。
NG③:盛りすぎ。
100日で30も40もタスクを並べると、優先順位が消えて全部が中途半端になります。優先度「高」は各領域2〜3本に絞り、残りは「Day100以降」に送ります。100日は完了ではなく「土台づくり」の期間だと割り切ることです。
NG④:前経営者依存の放置。
引き継ぎを「なんとなく」で進めると、退任と同時に知識が消えます。記入例②のように、引き継ぎ期間と手順書化をタスクとして明示します。
公式ツールと併用する
自社のテンプレート1枚で回すのが基本ですが、社内外への説明や体制設計には中小企業庁の公式ツールが役立ちます。無料で公開されている3点は、100日プランと役割が異なります。
| 公式ツール | 役割 | 100日プランとの関係 |
|---|---|---|
| PMI分析ワークシート | 譲受側・譲渡側の現状分析 | Pre-PMI〜Day60の「現状把握」の下敷き |
| PMIアクションプラン | 誰が・いつ・何をやるかの計画 | 下段タスク行とほぼ同じ役割 |
| 統合方針書 | M&A目的・統合方針・体制の言語化 | 上段一覧表の「経営・組織」の裏付け |
出典:中小企業庁「PMI実践ツール」(令和6年3月)。公式の「アクションプラン」も、結局は誰が・いつ・何をの3点で構成されており、本記事の「最小4列」と考え方は同じです。より広く「統合前後にやること」を一覧で押さえたい場合はPMIチェックリスト|統合前後にやることを一覧化もご活用ください(社内向けに「最初の100日でやることリスト」として編集し直すのも有効です)。
7. PMI 100日プランテンプレートをExcelで運用する限界と、ツール化の分岐点
100日プランは、まずExcel/スプレッドシートのテンプレート1枚で始めれば十分です。ただし、統合が進むとExcel運用ならではの形骸化が起きます。現場でよく見るのは次の3つです。
- 版の乱立:メール添付で回すうちに「最新版」が分からなくなる。
- 更新されない:担当・期日が古いまま放置され、進捗が実態とずれる。
- 色で誤魔化す:セルの色だけ緑になって、完了基準を満たしていないのに「完了」に見える。
タスクが数十件・担当が複数部門にまたがり、週次で状態を追う段階になったら、台帳をツール化する分岐点です。判断軸はPMIの進捗管理ツール比較|Excel台帳の限界とツール化に整理しています。私たちも、100日プランの「タスク・担当・期日・完了基準」をそのまま進捗管理できるよう、PMI Manager(PMI進捗管理プロダクト)の運用知見をこのテンプレートの列設計に反映しています。
「自社だけで100日プランを回しきれるか不安」という場合は、PMIコンサルティングの全体像や、よくある落とし穴をまとめたPMIの失敗事例7選|原因と回避策もあわせてご覧ください。
8. まとめ|まず一覧表とタスク行を1枚に
- PMI 100日プランのテンプレートは、①4領域×4フェーズの一覧表 ②担当・期日・完了基準を持つタスク行の二層でいい。
- 迷ったら「タスク・担当・期日・完了基準」の最小4列から。この4つが1行で揃うことが、機能する100日プランの最小単位。
- 記入例のとおり、Pre-PMI列(体制決め)・引き継ぎタスク・クイックヒットを早期に置くと、100日が動き出す。
- 空欄の担当・期日、曖昧な完了基準、盛りすぎ、前経営者依存の4つのNGを避ける。
- Excelで始め、形骸化のサインが出たらツール化を検討する。
まずは本記事の型を1枚に写し、自社の言葉で埋めてみてください。編集できるテンプレート本体は以下から無料でダウンロードいただけます。
【無料DL】PMI 100日プランテンプレート
「一覧表+タスク行」の型と記入例のフォーマットをそのまま編集できます。
👉 PMI 100日プランテンプレートをダウンロードするPMIの進め方に迷ったら:自社の状況に合わせた100日プランの立て方は、無料相談でお気軽にご相談ください。”現場主義 × AI” の視点で、絵に描いた餅にならない実行計画づくりをご支援します。
監修者
大槻 伸夫(キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO)
中小企業の事業承継・PMI・業務改善を、現場主義とAI活用の両輪で支援。製造業・サービス業を中心に、事業承継型M&A後の100日プラン策定・伴走から、業務可視化・属人化解消までを一気通貫で手がける。PMIの進捗管理プロダクト「PMI Manager」の企画・運用を通じて、絵に描いた餅にしない統合実務の型化に取り組んでいる。本記事のテンプレート列設計も、その運用知見を反映したもの。
